旅行のパートナーに最適な旅カメラの選び方と、究極厳選したおすすめの機種をご紹介している本連載。
第1回目であった前回は、旅カメラ選びの1つ目のポイント:「レンズを交換して多彩な表現が楽しめるか?」をテーマに、レンズ交換式カメラについてご紹介した。
単焦点レンズやマクロレンズなど様々な種類のレンズを駆使した多彩な写真表現を楽しめて、しかもスマートフォン内蔵のカメラやコンパクトカメラで撮影したものを大きく上回る高画質で撮影できることがその魅力だ。
しかし、レンズ交換式カメラにも様々な種類がある。プロカメラマンが愛用するような昔ながらの大きな一眼レフカメラや、最近では一眼レフの高画質はそのままに小型軽量化したミラーレスカメラというものも発売されている。しかも、レンズ交換式カメラの内部に搭載されているイメージセンサーの大きさによっても、その種類はさらに細かく分かれる。
あまりにも多くの種類があるため、初心者の中にはあまりの複雑さで何が何やらわからなくなってしまう方もいるだろう。
そこで連載第2回目である今回は、旅カメラ選びの2つ目のポイント:「機内持込手荷物に収まる小型軽量なカメラシステムか?」をテーマに解説していく。あなたにとって旅先で相棒となる最適な旅カメラを見つけるための一助になれれば幸いだ。
Contents
小型軽量で高画質なミラーレス一眼カメラ
結論からお伝えすると、観光旅行に持って行く旅カメラとしては、マイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラがお薦めだ。
一眼レフとミラーレスの違い
レンズ交換式カメラには主に一眼レフカメラとミラーレスカメラの2種類がある。
一眼レフはフィルムカメラの時代から伝わる昔ながらの構造を持つカメラで、カメラ内部に反射鏡(レフレックスミラー)を搭載している。この反射鏡はレンズから通した光の像を反射させて光学ファインダーで確認できるようにしたり、カメラ下部に設置されたAF(オートフォーカス)センサーを働かせるために使われる。
しかし、反射鏡を設置するためにはカメラの内部に一定のスペースを確保する必要があるので、その分カメラは大きく重たくなってしまう。
一方、ミラーレスは内部構造に反射鏡を必要としないレンズ交換式カメラを指す。構図の確認は電子ファインダーで可能だから光学ファインダーは不要だし、ピント合わせはイメージセンサー上で可能なため独立したAFセンサーも不要。つまり、ミラーレスでは反射鏡がなくても構図確認やピント合わせが可能なのだ。
ミラーレスは構造に反射鏡を必要としない分、余分なスペースを削減でき、コンパクトにカメラを設計できる。結果的に小型軽量でかさばらないので、一眼レフと比較して持ち運びが非常に楽だ。
肝心の画質も一眼レフと同等、場合によっては一眼レフを凌駕することもあるので本格的な作品撮りにも申し分ない。
軽いのに一眼レフと同等以上の高画質
ひと昔前までミラーレスは小型軽量なだけの一眼レフの機能限定版で、主にエントリーユーザー向けのものがほとんどだった。しかし、ここ数年でミラーレスは機能性が大幅に向上したことで、プロカメラマンにも一眼レフから乗り換える方が大勢おり、現在ではレンズ交換式カメラの主流となっている。
カメラ業界の二大巨頭と呼ばれるニコンとキヤノンからも2018年に相次いでプロ仕様のミラーレスが発売された。それに加えて、パナソニック、シグマ、ライカの3社がフルサイズ規格のミラーレスシステムの開発で協業すると発表したことからも、このことはもはや疑いようのないことだろう。
つまり、ミラーレスカメラでも本格的な写真作品は十分に撮影できるとカメラ業界全体が認めたということだ。
一眼レフと同等以上の画質で撮影できて、しかも一眼レフより小型軽量で持ち運びが楽。
旅カメラとして考えても、画質が同じならより小型軽量で携帯がしやすいカメラを選んだ方が疲れにくく、カメラの重さに悩まされずに旅を心から楽しめる。また、カメラが軽ければ、さっと取り出して気軽にシャッターが切れるので、その分フォトジェニックな決定的瞬間をモノにできる確率も上がる。
そう考えると、旅カメラにはミラーレスカメラが最適だとお分かりいただけるだろう。
旅カメラにはマイクロフォーサーズが最強!
ミラーレスカメラは一眼レフカメラと比較して小型軽量だが、ミラーレスカメラにも大きくて重いものから小さくて軽いものまで様々なものが存在する。
カメラに内蔵されているイメージセンサーの大きさによって種類が分かれるが、小さいものから順に主に次の3種類に分かれる。マイクロフォーサーズ(17.3×13.0mm)、APS-C(23.6×15.8mm)、そして35mm判フルサイズ(36.0×24.0mm)だ。
最近新規参入が相次ぎ、現在カメラ市場を賑わせているのは35mm判フルサイズのイメージセンサーを搭載するミラーレスカメラ(フルサイズミラーレス)だ。加えて、プロカメラマンの愛用者が非常に多いのもフルサイズだ。
しかし、はっきりと断言できる。旅カメラとして考えた場合はマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラ(以下、「マイクロミラーレス」とする)こそが最も重宝する、と。
理由は主に2つ。実用的な画質と移動に有利な携帯性だ。
フルサイズに勝るとも劣らない実用十分な高画質
旅カメラにマイクロミラーレスをお薦めする一つの目の理由は、実用的な画質を比較すると、マイクロフォーサーズとフルサイズの画質は大差ないことが挙げられる。
マイクロミラーレスが採用しているフォーサーズ(4/3)のセンサーのサイズはフルサイズのものの3分の1にも満たない。(それでもスマートフォン内蔵カメラやコンパクトカメラの2倍から7倍の大きさはある。)センサーサイズが大きいほど光の情報量が多く高画質が得られるので、普通に考えればフルサイズの方が圧倒的に有利だ。
しかし、カメラの画質はイメージセンサーの大きさだけで決まるものではない。イメージセンサーの大きさに加えて、デジタル画像を加工して出力する画像処理エンジンと、イメージセンサーへ光を導くレンズ。3つの要素が相互に影響し合うことで総合的な画質が決定する。
この中で特に重要なのがレンズだ。どんなに大きなセンサーを搭載していても、レンズの画質が悪ければ高画質は得られない。
ところが、マイクロフォーサーズ規格のレンズは専用設計によって画像の隅々まで高画質が得られるようになっている。結果的に、小さいセンサーサイズにも関わらず、フルサイズに勝るとも劣らない高画質が得られるのだ。
また、大きいセンサーサイズのカメラは暗所でもノイズなどざらつきが少なく綺麗に撮影できる性質がある。しかし、実用面で考えた場合、マイクロフォーサーズでも必要十分な画質は暗所撮影でも得られる。
暗所撮影では通常、ISO感度を上げてイメージセンサーに取り込む光の量を増やすことで撮影に十分な明るさを確保する。ISO感度を上げると手ぶれを抑えて鮮明に撮影できるが、一方でノイズが増えて画面がザラザラしてしまう。感度の上げすぎは良くないが、一般的にはISO3200までの感度が高画質で撮影できれば十分だ。
センサーサイズの小さいマイクロフォーサーズでもISO3200からISO6400ぐらいまでなら十分高画質で撮影できるので、実用面では必要十分なバランスの取れた高感度画質は得られると言える。
LCCの手荷物規定に収まる小型軽量なシステム
旅カメラにマイクロミラーレスをお薦めするもう一つの理由は、LCCでの移動に有利なシステム全体の小型軽量さにある。
マイクロフォーサーズシステムの総重量はフルサイズの半分
レンズ交換式カメラは「システムカメラ」だ。カメラ単体だけでは撮影ができず、レンズやフラッシュ、三脚などの周辺機器と組み合わせて使用することで、初めてその本領を発揮できる。つまり、レンズ交換式カメラを旅行に持っていく際はカメラ本体だけではなく、必然的にレンズなどの様々な周辺機器も一緒に持って行くことになる。
この時の総重量はバカにならない。一眼レフと比較して小型軽量なミラーレスであっても、レンズなども含めるとそれなりの重量になる。
特に、フルサイズミラーレスで使用するレンズの重量は厄介だ。フルサイズミラーレスには広角域から標準域のレンズに関してはコンパクトなレンズが多く用意されている。しかし、中望遠域以上になると光学設計上の問題でレンズの小型化が難しくなるため、結果的に一眼レフ用のレンズと大きさや重さがほとんど変わらない。
ソニーのα7ⅢやニコンのZ6など、フルサイズミラーレスには一眼レフと比較して小型軽量な機種が多い。しかし、カメラ本体がどんなに軽かったとしても、レンズを含めたシステム全体の総重量を算出すると、とても旅行が楽しめるレベルの重量ではなくなってしまうのだ。
一方、マイクロフォーサーズでは同じシステム構成のカメラ機材を一式持っていった場合、フルサイズのシステムと比較して半分ほどの総重量で済む。
具体的なマイクロフォーサーズとフルサイズのシステム総重量に関する比較については、以前執筆したこちらの記事で解説しているので、興味がある方は合わせて目を通していただくと良いだろう。
いずれにしろ、フルサイズでは4kgになる機材システム一式が、マイクロフォーサーズでは半分の2kgほどで収まってしまう。これは非常に恐るべきことだ。
機材一式が軽ければ軽いほど移動は楽になるので、街歩きをしながら長時間の撮影をしても疲れない。しかも、カメラの重量に気を取られることもないので、旅行それ自体を存分に楽しむことができる。
マイクロフォーサーズシステムはLCCの利用に有利
さらに言うと、マイクロフォーサーズの小型軽量なカメラシステムはLCCを利用して移動する際にも有利だ。
近年は航空業界にも格安化の需要が高まったことでLCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)が充実してきた。LCCでは提供するサービスを限定することで運賃を抑えているのだが、ANAやJALのような大手航空会社と違って、機内に持ち込める手荷物の重量が厳しく制限されている。
下記の表は日本に乗り入れている代表的なLCCにおける機内持込手荷物に関する規定をまとめたものだ。各キャリア共に標準的な運賃タイプのものを掲載しているが、規定の重量を超えるとその分は追加料金が必要となる。(2018年11月現在)
※スマートフォンで見る場合はスワイプで表を横にスクロールできるよ!
キャリア名 | 機内持込可能な荷物の個数 | 荷物のサイズ | 荷物の総重量 |
ピーチ航空 | 手荷物+身の回り品の計2個 | 高さ・幅・奥行の合計が115cm以内、 各辺が55×40×25cm以内 |
10kg |
バニラエア航空 | 手荷物+身の回り品の計2個 | 高さ・幅・奥行の各辺が56×36×23cm以内 | 10kg |
ジェットスター航空 | 手荷物+身の回り品の計2個 | 高さ・幅・奥行の各辺が56×36×23cm以内 | 7kg |
春秋航空 | 手荷物+身の回り品の計2個 | 高さ・幅・奥行の3辺の合計が115cm以内、 各辺56×36×23cm以内 |
5kg |
上記の比較表を見てみると、航空券に付帯されたサービス料金以内で収めるためには、機内に持ち込める手荷物は多くても10kg以内に収める必要があることが分かる。そして、そこから持ち運びが可能なカメラの機材一式の総重量を考えると…
滞在に必要な最低限の衣類や旅行小物などを持って行ける重量も確保する必要があるため、カメラ機材一式にかけられる総重量は多くても3kgが限界だろう。
上記の参考記事では僕が普段愛用する取り回しの良い機材システムを例に挙げたが、2kgを切る軽さで収まっている(1.95kg)。OM-D E-M1 MarkⅡやPROレンズなど第一線のプロカメラマンが使用するハイエンドクラスのシステムを持って行ったと仮定した場合でも、マイクロフォーサーズなら3kg以内で収まる。
フルサイズの機材システムではこうはいかない。もしフルサイズミラーレスで同じプロ仕様の機材構成を組んだ場合、春秋航空の規定である5kgは軽くオーバーしてしまう。広角から望遠まで満遍なくフルセットで持って行った場合は、ジェットスターの7kgもあっさり超えてしまうだろう。
こうして見てみると、フルサイズミラーレスシステムはLCCを活用した旅行には向かないことが十分にお分りいただけるだろう。もちろん追加料金を払えば機材の輸送は可能だが、せっかくできる限り安く移動するためにLCCを利用するのにそれでは本末転倒だ。
その点、マイクロフォーサーズは元々の機材重量が軽いため、どんなに機材を持って行っても、それこそプロ仕様の機材システムをフルセットで持って行ったとしても、LCCの重量規定に触れることはない。
まさにLCCを活用した旅行にはうってつけの、大移動時代のニーズを満たした小型軽量なシステムカメラと言えるだろう。マイクロミラーレスこそが最強の旅カメラなのだ。
総評
レンズ交換式カメラには内部構造の違いやイメージセンサーの大きさによって様々な種類がある。
しかし、軽快なフットワークが何よりも重要となる旅写真の撮影では、小型軽量かつ高画質が得られるマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラ(マイクロミラーレス)が最も相応しいと言える。
特に、マイクロフォーサーズシステムの機材総重量はフルサイズのものと比較して半分程度で、LCCの手荷物規定にも十分に収まるため、LCCを活用した旅行にも最適だ。
とはいえ、マイクロミラーレスは、最近のフルサイズ機の性能と比べると画素数や高感度画質が控えめなため、見劣りしてしまうことがあるのも否めない。しかしながら、旅写真の撮影ではマイクロミラーレスでも必要十分な画質が得られると断言できる。
そこで、連載第3回目となる次回は、3つ目のポイント:「画質スペックは必要十分で負担にならないか?」をテーマに解説していく。
どうぞ乞うご期待!
★連載第3回目の記事はこちら↓↓↓
結論を早く知りたい方には…
しかしながら、「早くおすすめの旅カメラを知りたい!」、「最終回まで待ちきれない!」という方もいらっしゃるだろう。
そんな探究心旺盛な方のために下記の記事を用意させてもらった。
ぜひお読みいただいて、今回の記事と合わせて参考にしてもらえると嬉しい。
きっとあなたにとっても最高の相棒となるだろう旅カメラをご案内できるはずだ。