祝・地質年代「チバニアン」決定!!!
先日、これまで「更新世・中期」(76万年前〜12万6千年前)と暫定的に呼ばれていた太古の時代が、正式に「チバニアン」と命名されることが決定した。
文字通り、日本の「千葉」県が地質年代の名称に加わったということもあり、大きく話題に取り上げられたことは、地質学ファンの方でなくても記憶に新しいだろう。
実は、チバニアンという地質年代が確かに存在したことを証明する地質学的にも貴重な地層(GSSP:国際標準模式地)が、僕の地元でもある千葉県市原市の南部にある田淵に存在する。
地球の年代を決定づける世界的にも重要な証拠が地元にあることは感動したが、それを機に地元の市原市へ多くの見物客が訪れてくれたことには非常に驚いた。地層がある場所はほとんど川と田んぼしかない辺鄙な場所なのだが、決定直後の土日には合計で600人以上もの訪問が確認できたらしい。
そのニュースを聞いて、僕自身もチバニアンの地層がどんなものか見てみたいという衝動に駆られた。そして先日、僕もチバニアンの地層を見学しに行ってみたというわけだ。
そこで今回の記事は、地質年代「チバニアン」決定の証拠となった千葉県市原市田淵にある地磁気逆転地層を見学しに行った際の旅行記をお送りしていく。チバニアン地層までの行き方や見所もご紹介していくので、地球の歴史や地質学に興味のある方はぜひこの記事で予習をしていただけると嬉しい。
Contents
チバニアンって一体どういうもの?何が重要なの??
チバニアンの地磁気逆転地層を訪問する前に、抑えておくべき基礎知識をここで予習しておこう。地層をただ眺めるだけよりも、より一層太古の時代を身近に感じられるようになるはずだ。
チバニアンとは?
「チバニアン」とは、地層学的に地球の歴史を区分した地質年代の名称の一つで、76万年前から12万6千年前に存在した「更新世・中期」のことを示す。日本ではまだナウマンゾウが大地を闊歩していた時代だ。
最近まで「更新世・中期」には正式な名称が存在しなかった。しかし、千葉県の市原市田淵にある地層が前年代(カラブリアン)から更新世・中期への地質年代の移行を決定づける地層(GSSP:国際標準模式地)として国際的に認められたことで、その地層がある千葉県に因んで更新世・中期を「チバニアン」と呼ぶことが正式に決定したというわけだ。
ちなみに、GSSPは市原市にあるので「イチハラニアン」と名付けても良さそうな感じはするが、地質学的には地質年代の決定の際にある程度広いエリアを考慮する必要があるため、「チバニアン」の名称が採用されたとのこと。
市原市田淵の地層がGSSPに選ばれた理由
地質年代の移行を決定づける証拠である「GSSP」(国際標準模式地)として、なぜ市原市田淵にある地層が認められたかについても簡単に触れておこう。
結論から言うと、田淵の地層には地磁気(地球が持つ磁力)が逆転していた時代が存在したことを示す重要な証拠が確認できたからだ。
地球には地磁気というものが存在する。地球を一つの大きな磁石のようなものとして考えると想像しやすいだろう。
コンパスを使用するとN極の針が北を指し、S極の針が南を指す。現在はこれが当然の状態だが、太古の昔は地磁気が逆転してN極の針が南を指し、S極の針が北を指す時代が存在した。そして、現在の地磁気の状態(正磁極期)と地磁気が逆になった時代(逆磁極期)が何度も入れ替わっていたという。
この地磁気の向きが入れ替わったときを境にして地質年代は移行する。直近では76万年前から12万6千年前の間に、地磁気が現代とは逆転した時代が訪れていたらしい。
地層に含まれる鉱物にはその当時の地磁気の向きを記録する性質があるのだが、市原市の田淵にある地層から採取された鉱物からは現代とは地磁気が逆になっていたことを示す記録を確認できたことがその根拠となっている。
ちなみに、77万年前に地磁気が逆転していたことを示す地層はイタリアにも2箇所存在する。しかし、どちらの箇所も研究者が訪問して調査するのには困難な地形にあるらしい。それに対して、田淵の地層は訪問や調査が比較的しやすい場所に立地しており、このこともGSSPに選ばれた理由になっている。
また、太古の時代の田淵周辺は海底だったのだが、砂や岩石の堆積するスピードが他の地域よりも速く、年代ごとに層の厚い地層が形成されたことも理由。地層の層が厚ければ地磁気の向きが入れ替わった証拠となる鉱物をより多く採取しやすいので、綿密な調査をする際に重宝するのだ。
チバニアン見学で準備しておくべきもの
次項からチバニアンの地磁気逆転地層までの行き方を紹介していくが、その前に用意しておくべきものをまとめておこう。
・ミドルカット以上のアウトドアシューズ(長靴でも可)
・長袖Tシャツ
・長ズボン
・帽子
チバニアン地磁気逆転地層の最寄り駅となる月崎駅から地層までは徒歩で約30〜40分かかる。また、地層は養老川の河原にあり、滑りやすい場所を移動することになる。
特に、ベストシーズンを迎える6〜8月頃は養老川の水かさが増して、危険度も上がるので、自然の中をしっかりと歩けるアウトドアシューズを用意しておくのがおすすめだ。
また、夏場は河原近辺にヤマビルが出現することもあるので、吸血されないように長袖のTシャツ・長ズボン・帽子を用意しておこう。
月崎駅からチバニアンまでの行き方
それでは、まずはチバニアン地磁気逆転地層の最寄り駅である月崎駅から地層までの行き方をご案内しよう。徒歩だと30〜40分かかるのだが、駅から少々離れた場所にあるので事前にルートを確認しておくと訪問する際に役立つだろう。
月崎駅から入口・駐車場までのルート
まずは、JR内房線の五井駅から乗り換えて、小湊鐵道で月崎駅まで向かおう。去年の台風や豪雨で小湊鐵道の沿線はかなりの被害を受け、つい最近まで運休されていたが、去る1月27日に完全復旧を遂げた。
小湊鐵道はレトロな趣が人気の生活鉄道だが、春になると沿線に桜や菜の花が咲き誇るので、多くの行楽客やカメラマンで賑わっている。下記の記事には以前に春から初夏にかけて訪れた際の旅行記をまとめたので、ついでに目を通していただくといいだろう。
月崎駅のホームに降りると、改札の反対側には昔懐かしい行先標の看板とユニークなかかしが出迎えてくれた。
駅舎の外に出たところ。
画像中央奥にはトトロが住んでいるような趣のある「森のラジオステーション」という小屋があるが、春のイベント時はこの駅前広場で地元の方が訪問客に豚汁や甘酒を振る舞っていた。しかし、僕が訪れたときは冬の平日ということもあり、僕以外にはほとんど人の姿は見られなかった。
改札を抜けた目の前には月崎駅前唯一の商店である「ヤマザキショップ」がある。
ここから30〜40分ほど歩くことになるので、このお店で飲み物やチョコレートなどの軽食を買っておくといいかもしれない。また、この後に紹介するレンタサイクルの受付もここでされているので、チバニアンの地磁気逆転地層まで自転車で向かいたい場合はレンタルの申込みを済ませよう。
ヤマザキショップを前にして右側へ進むとレンタサイクル用の自転車が駐車されている場所が見えてくる。
1回300円でママチャリが借りられる。自転車で目的地まで行きたい場合は先ほどのヤマザキショップでレンタルの申込みをしよう。
また、この月崎周辺は地磁気逆転地層以外にもクウォードの森など豊かな里山の自然が広がっているので、地層の訪問ついでに自然の中をサイクリングしてみるのも楽しいだろう。
さて。準備はできたということで、地磁気逆転地層へ向かうことにしょう。まずは、レンタサイクル置き場の奥の道をまっすぐに進んで行こう。
しばらく進んでいくと、右手側に遊具のある公園と「月崎公民館」が見えてくる。
そこからもう少しまっすぐに進むと、突き当たりに「山登理」という文字看板のある建物が見えてくる。そうしたら、道を右に曲がろう。
少し進むと「境橋」という橋が見えてくる。この下に流れている川が養老川だ。
なお、たまに間違えてしまう方がいるらしいが、この境橋の直前にある道を曲がっても地磁気逆転地層には辿り着けないので注意しよう。
境橋を渡って登り坂を進むと、下の画像のような景色が見えてくる。
ここに辿り着いたら、車道の脇を進もう。右手側に見える歩道の奥に進んでしまうと山の中に入ってしまうので注意だ。
車道の脇を進んでいくと、左手側に「チバニアン→」という看板が見えてくる。
矢印に沿って視線を移動させると、その先に「田淵会館」という文字看板が見えてくるはずだ。
ここまでくれば目的はもうすぐだ。看板が指す道を少し進んでいくと、チバニアンの地磁気逆転地層へ繋がっている遊歩道の入口に辿り着ける。
なお、道に沿ってもう少し先へ進むと、やがて左手側に駐車場が見えてくる。車で来た場合はここに停めるといいだろう。
ちなみに、この駐車場には後述する資料館を兼ねた「ビジターセンター」や、軽食屋・土産物屋・簡易トイレなどの施設も設けられている。駅から徒歩で来た場合も含めて、地磁気逆転地層訪問の拠点として活用するといいだろう。
入口から地磁気逆転地層までのルート
地磁気逆転地層へ向かう遊歩道の入り口を抜けて少し進むと、掲示物の立て看板がいくつかの見えてくる。
ここでは地層の発見からGPPS(国際標準模式地)として正式認証されるまでの物語や地層の学術的な説明が記載されている。また、見学者向けの簡単な資料も用意されているので、一部もらっておくといいだろう。
遊歩道を道なりに進んでいくと途中で駐車場からの道と合流するのだが、その少し先から下り坂が始まる。「足もと注意」の立て看板があるように、傾斜がかなりあるので注意して進もう。
下り坂を進むと簡素な橋が見えてくるのだが、そこを抜ければチバニアンの地磁気逆転地層はもうすぐだ。
橋を渡った先が地磁気逆転地層がある養老川の河原の上になるのだが、そこには見学者に向けての注意事項の立て看板が掲げられている。
怪我や事故に繋がらないように、ここに記載されていることをしっかりと把握して、十分に注意して進んでいこう。
なお、立て看板に記載されているQRコードをスマホで読み取ると、市原市が運営しているチバニアン地磁気逆転地層の紹介動画と道案内動画を視聴することができる。紹介サイトのURLをこちらにも載せておくが、需要な項目がコンパクトにまとめられており理解しやすいので、見学前に動画で予習しておくといいだろう。
・15分で学ぶチバニアン|市原市
http://www.city.ichihara.chiba.jp/smph/joho/koho/kouhou/ichiharajohokyoku/h29/chibanian.html
ちなみに、この立て看板の反対側(見学者の背後)には後ほど紹介する田淵不動滝というちょっとした名所もある。こちらも帰りに見ていくといいだろう。
さて、立て看板の先に進むとすぐに階段が見えてくる。やや傾斜が急で、若干板が飛び出ていて転倒しやすいので、細心の注意を払って降りていこう。ゴールはすぐそこだ。
養老川の河原に降りたら左手側へ進もう。
するとすぐに巨大な地層が地面に露出している場所に辿り着く。
こここそが地質年代「チバニアン」の根拠となった地磁気逆転地層だ。到着おめでとう!
チバニアンの見所
チバニアンの地磁気逆転地層に辿り着いたところで、ここでチェックしておくべき重要な見所をご紹介しよう。
養老川の河原に下りると、眼前に大きな地層がそびえているのが見える。まずはその迫力に誰もが圧倒されることだろう。
しかし、ただ地層を見ただけではそれの何が重要なのかは分からないだろう。僕が見学に訪れたときも同じような感じだった。
実は重要な箇所は地層の向かって左端のエリアにある。
上の画像がその場所の様子だが、画像の左奥には階段と目印のようなプレートが見えるだろう。
その場所を拡大したのが次の画像だ。
最重要箇所は階段を上がった上のエリアとなる。地質学研究に必要な試料の採取などはここで行われている。
残念ながら、前年の豪雨の影響で崩落の危険があったため、僕が訪れたとき(2020年1月中旬)はこれ以上近づくことはできなかったのだが、通常時は階段を登って重要箇所の目前まで迫れる。
しかし、そんなこともあろうかと思って300mm相当の望遠ズームレンズを携帯しておいてよかった。これで最重要の見所をアップで迫ってみよう。
そして、これがその画像だ!
…といっても、何が何やらさっぱりと思うかもしれない。大丈夫。僕も初め見たときは同じだった(笑)。一つ一つ詳しく解説していくのでどうか慌てないでほしい。
上の画像の箇所で見るべきところは4つある。画面左下の赤ピン付近を右方向へ走る横線と、画像左端にある赤・黄・緑の3色ピンだ。
白尾火山灰層
まず、赤ピン付近を右方向へ走る横線から。これは白尾火山灰層という薄い地層で、現在の長野と岐阜の間にあった古御嶽山が噴火した際にこの付近まで飛ばされた火山灰が積もり積もったものだ。この噴火が起こったのが今から約77万年前と確認されており、その時代は地磁気の方向が現在とは逆の状態だった。
逆転した地磁気が現在の状態に変わり始めたのは、厳密に言うとそれから1万年ほど経った頃(今から約76万年前)なのだが、白尾火山灰層は前後の年代を区分するのに目で見て分かりやすい指標となっている。
ガイドの方に伺ったところ、一般の見物客に説明する際はこの白尾火山灰層を指標にして解説しているとのこと。火山灰層の下側を逆磁極期だったカラブリアン、上側を現在と同じ磁極期になるチバニアンに分け、地質年代が移行したのは火山灰が積もった約77万年前だと簡略化して説明しているらしい。
しかし、それはあくまでも見物客に分かりやすく説明するために簡略化したもので、実際の事情は少々異なる。そこでより正確な年代移行を示すものとして使われているのが、次に解説する3色のピンだ。
赤・黄・緑の3色ピン
地層に打ち付けられた3色のピンは地質年代の移行を示す目印として使われているが、それぞれ下から順に古い年代を示している。
赤ピンは逆磁極期だったカラブリアン(更新世・前期)、黄ピンは地磁気が逆転状態から現在と同じ状態へ変わっていった移行期、緑ピンは完全に正磁極となった年代を示している。そして、地質学的には地磁気の移行期に当たる黄ピンから上の地層をチバニアン(更新世・中期)のものとして決定づけている。
つまり、赤ピンと黄ピンの境目がカラブリアンとチバニアンを区分する正確な指標になるというわけ。この境目は白尾火山灰層が積もった約1万年後、現在から約76万年前に当たり、ここからチバニアン(更新世・中期)という地質年代は始まったのだ。
ちなみに、黄ピンで示される移行期は約6千年あったらしい。そう考えると、地磁気が現在と同じ状態へ完全に移行されたのは約75万4千年前ということになる。
地磁気逆転地層の本当にすごいところは、このカラブリアンから移行期を経てチバニアンへと至る年代的な移り変わりを1つの地層で丸ごと確認できてしまえるということなのだ。
こんな場所は地球上に数えるくらいしかない。
以上のことを踏まえた上で地磁気逆転地層を見学すれば、地質年代への理解がより深まるだろう。それと同時に、約76万年前の太古の時代に対する思い入れもより強くなって、見学がさらに楽しめるはずだ。
おまけ:チバニアン周辺の見所
前項までチバニアン地磁気逆転地層の見学自体は終了となる。しかし、実は地磁気逆転地層の周辺には他にも興味深い見所がまだいくつか残されている。最後におまけとしてそのいくつかをご紹介しよう。
貝類の化石と生痕化石
地磁気逆転地層の背後には養老川が流れているが、その川底に目をやると面白いものが見られる。それが貝類の化石と生痕化石だ。
太古の昔、この周辺は海底だった。そのときに生息していた貝類の化石が川底にいくつも点在している。
水の流れが速くて画像にはうまく写らなかったが、白く丸っこい大きな痕が貝類の化石だ。
また、他の場所に目をやると、生物が地面を這ったような痕や糞も確認できるだろう。これが生痕化石で、古生物ファンの方にはたまらないだろう。理科が大好きなお子さんを連れていくと喜びそうだ。
菩薩の素掘りのぞき穴
もう一つの見所も地磁気逆転地層の近くにある。まずは、養老川の河原に来る際に降りてきた階段のところまで戻ろう。
そうしたら、地磁気逆転地層がある方向とは逆側、つまり階段を背にして右方向へ川伝いを進む。このときには下記の画像のように川と陸の縁を進むことになるので、滑って転倒しないように細心の注意を払おう。
川伝いに少し進むと見えてくるのが、下記のような光景だ。
実はこれは歴史文化的に重要なものだったりするのだが、パッと見ただけではどういうものか分からないかもしれない。
この穴は自然にできたものではなく、室町時代に付近に住んでいた農民たちによって掘られた素掘りのトンネルなのだ。かつては農民たちはこの周辺で田畑を営んでいたのだが、田んぼから流した余分な水を養老川へ通すためにこのトンネルは作られたらしい。
また、養老川周辺の地層は柔らかいこともあり、トンネルから流れ出た水が長い年月をかけて注ぎ口の真下に穴を作ったとのこと。それが甌穴(ひょうけつ)だ。
ちなみに、この素掘りのトンネルは別名で「菩薩の素掘りのぞき穴」とも呼ばれている。トンネルを覗くと、その奥にはこの後に紹介する田淵不動滝の美しい姿が拝めることから、その名前が付いたらしい。
田淵不動滝
次にご紹介するのは、先ほども少し触れた「田淵不動滝」。
前項で紹介した「菩薩の素掘りのぞき穴」の向こうに広がる人工の滝だ。養老川の河原へ降りる前に通った簡素な橋の上からも見られるのだが、元々は土地の上部にあった田んぼで溢れた水を「菩薩の素掘りのぞき穴」を通して養老川へ排水するために作られたものらしい。
残念なことに、僕が訪れたときは季節的な影響か水量が少なく、迫力がほとんど感じられなかった。しかし、水量が多くなる梅雨から夏にかけては迫力のある美しい姿が拝めるという。
意外と見過ごしがちだが、地磁気逆転地層を訪れたら是非とも一緒に見てほしいスポットだ。
チバニアンビジターセンター
最後に紹介するのが、地磁気逆転地層の資料館も兼ねている「チバニアンビジターセンター」だ。
「更新世・中期」の名称が正式に「チバニアン」に決定されたことを受けて、つい最近設置されたばかりの施設なのだが、ここには地磁気逆転地層に関する貴重な資料がいくつか展示されている。
例えば、下記の画像で展示されているのは、特殊な技法を用いて地層の一部を剥ぎ取った標本だ。
標本の下側には年代測定の決め手となった白尾火山灰層がしっかりと刻まれているのがお分かりいただけるだろう。さらにその下には貝の化石や生痕化石も確認できる。
また、ここでは解説動画の視聴も可能だ。
地磁気逆転地層に関する基礎知識や、先ほどの地層の剥ぎ取り標本を採取する様子などを見られる。
こちらのコーナーでは、地層に埋もれていた貝類や有孔虫などの古生物化石を顕微鏡で観察できる。
ちなみに、このビジターセンターには専門のガイドが常駐しており、チバニアンの地磁気逆転地層に関する解説を聞くことができる。僕は地層の見学後にここに立ち寄ったのだが、僕もここで地層に関する詳しい情報を学ばせてもらった。
また、専門ガイドによるガイドツアーも開催されている。60分間の見学コースなのだが、1〜15人は1,500円、16〜30人は3,000円、31人以上は応相談という形で実施されている。
下記の連絡先から問い合わせや予約ができるので、ガイドツアーに興味のある方は一度チバニアンビジターセンターまで問い合わせてみるといいだろう。
・TEL/FAX:0436-96-2755
受付時間:AM 9:00〜PM 4:00 (木曜日休館)
なお、ガイドツアーの申込書は下記のサイトからダウンロードできる。ツアーの予約をされたい方は、サイト下部に記載されている申込書をダウンロードし、必要事項を記入した上でビジターセンター宛にFAXを送ろう。
・チバニアンガイド|市原市観光協会
http://www.ichihara-kankou.or.jp/publics/index/229/
総評
今回は千葉県市原市の田淵にあるチバニアンの地磁気逆転地層に関する情報をお伝えしてきた。この記事を読めば、地磁気逆転地層までの行き方や見所はしっかりと網羅できるだろう。
研究者はともかくとして、一般の方にとってはアクセスがよく、設備が充実した場所とはお世辞にも言えないのが現状だ。去年の台風や豪雨からやっと完全復旧を遂げたばかりということもあり、未整備の場所がまだ多く残されている印象だった。
しかし、地元在住の方にお聞きしたところ、訪問者がもっと見学しやすくなるためにこれから整備を進めていく予定があるようだ。
具体的には、最寄りの月崎駅からの定期運行バスを設けたり、チバニアンビジターセンター周辺の施設をより充実させたり、今よりも楽に地層まで行けるように新しい遊歩道を整備したりなどだ。
周辺の完全整備までには多少の時間がかかるだろうが、今よりもずっと快適に地磁気逆転地層の見学が楽しめるようになるのは間違いないだろう。
とはいえ、現在の状態のままでも地磁気逆転地層の見学は十分に楽しめる。
繰り返すが、この場所は世界的に見ても数えるほどしかない。悠久の歴史を記録した地層を眺めることはきっと貴重な体験となるに違いない。
ぜひあなたもチバニアンの地磁気逆転地層を訪れて、76万年前へのタイムスリップを満喫していただければと思う。