【レポート】上総いちはら国府祭り 2019|蘇る平安行列と市原の心意気

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ワッショーイ!今年も祭りの季節がやってきた!!

僕が現在住んでいる千葉県の市原市は去る9月9日に台風15号によって甚大な被害を受けた。木々や電柱が倒れて道をふさいでしまった場所や、強風によって屋根の瓦を飛ばされてしまった家が市内の各地にあった。

僕の住まいのある地区でもその影響で大停電に見舞われた。復旧まで丸3日かかり、その間は江戸時代さながらの不便な生活を強いられるなど、本当に大変な思いをした。改めて電気や水道など整備されたインフラのありがたさを思い起こさせる出来事だった。

さて。そんな大災害から1ヶ月ほどたった10月5日と6日に、市原市全体を挙げての大きな祭りが開催された。

それが上総いちはら国府祭りである!

災害の爪痕はまだ各所に残る中での開催ではあった。しかし、この祭りには1ヶ月足らずで台風の被害から見事に復興を遂げた市原市の誇りと郷土愛、そして元気があふれていた。

僕は祭り初日である10月5日に上総いちはら国府祭りを訪れたのだが、今回はそのときのレポートをお届けしていこう。ぜひ市原市が持つ文化や歴史の奥深さとともに、たくましい市原市民の心意気を見ていただければと嬉しい。

Alan
実は去年もレポートする予定だったのだが…残念ながら去年は悪天候によってほぼ中止となってしまった。しかし、今年は好天に恵まれたことで1年越しの念願が叶い、やっと上総いちはら国府祭りの模様をお届けできる。ぜひ楽しんでほしい^^ @alan-d-haller

上総いちはら国府祭りとは?

上総いちはら国府祭りとは市原市の総力を挙げて2日間に渡って開催される市で最大の大祭だ。

「未来へつなげ!上総の旅路から」をテーマに、房総半島が誇る大国「上総国」として古代や中世で表舞台に何度も登場した奥深い歴史や独自の文化に根ざした市原の魅力を市内外に発信し、地域全体を盛り立てることを目的として開催されている。

最初の開催は2011年で、毎年10月の初旬の土日に開催されるのだが、第9回目となる今年は10月5日と6日に開催された。会場としてはJR内房線の五井駅からほど近い場所にある上総更級公園とその近辺が使われている。

市原市は『更級日記』の作者である菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ/本名不詳)が幼少期を過ごし、鎌倉幕府を開いた源頼朝が再起を図って館山から鎌倉へ進軍する際に通過した場所としても知られるが、祭りの目玉としてそれらをモチーフにした時代絵巻行列が催される。

また、東日本最大級の山鉾・山車の巡行のほか、千葉県内最大規模のよさこい(YOSAKOI)祭り、総勢1000人が対決するいちはら大綱引などの多彩で見応えのあるイベントも数多く開催される。さらに、仮装した子供や若者たちによるハロウィンパレードも夜に開催されるので、子供から大人まで幅広い層が楽しめる祭りとなっている。

もちろん、食や土産物の面でも抜かりはない。市原市が誇る料理や物産の屋台を中心に100以上の店舗が出店するいちはら国府市も設けられるので、市原グルメも存分に楽しめる。

多くの屋台・出店が目白押し!

それでは実際に上総いちはら国府祭りの様子を見ていこう。まずは、100以上の屋台が軒を連ねるいちはら国府市から。ここでは市原市が誇る人気のグルメや物産が楽しめるほか、市原市の文化や歴史をテーマにしたブースも設けられている。

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台風15号の被害に遭った市民を奮い立たせるために、会場の各所には「がんばろう市原!!」などのスローガンが掲げられていた。

市のふるさと文化課による『更級日記』をテーマにしたブースも設けられていた。

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『更級日記』は平安時代中期の一般的な貴族の女性の生活を垣間見ることのできる貴重な作品なのだが、来年2020年は作者である菅原孝標女が帰京のために市原を旅立ってから100年という節目の年になる。

ブースでは『更級日記』と市原市の歴史的な関係の解説が色々と聞けたのだが、節目の年を記念して菅原孝標女のイラストが描かれた缶バッジの作成もできた。さらに近くの別会場・夢ホールでは、平安時代の衣装を着て記念撮影ができる催しも開催されていた。

また、春に市原を舞台に開催される芸術祭「ICHIHARA ART × MIX 2020」に関するブースも設けられていた。

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「ICHIHARA ART × MIX」は小湊鐵道の沿線となる市原南部の里山を舞台に市内在住の多彩なアーティストが集って、歴史・文化・自然・人の暮らし・食・スポーツなど地域の持つ様々な資源を現代アートと融合させつつ発信する芸術祭のこと。3年置きに開催されるのだが、次回は来年である2020年の3月20日から5月17日に渡って催される予定だ。

舞台となる小湊鐵道は昭和のレトロな雰囲気を味わえることでも人気だが、イベント開催期間は桜や新緑の季節と重なることもあり、毎回多くの観光客で賑わっている。また、沿線にある美術館や観光施設などとも広く提携しているので、市原の魅力を余すところなく満喫できる。

なお、前回(2017年)の「ICHIHARA ART × MIX」の様子はこちらの記事をご参考いただくといいだろう↓↓

【旅行記】撮り鉄の聖地〜春の小湊鉄道紀行〜

ブースではそんな芸術祭「ICHIHARA ART × MIX 2020」についての周知・宣伝や出展者募集などが行われていた。また、菜の花のたねダンゴ作りも体験できた。作ったたねダンゴは沿線の各所に植えられるので、春には小湊鐵道を菜の花色に彩ってくれるだろう。

そのほかにも文化を発信するブースや土産物店、縁日の屋台が数多く設けられていたが、その周りではリズミカルな音楽に合わせて踊る人たちも見られた。とても楽しそうなお祭りであることが感じてもらえるだろう。

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絶品の市原グルメを堪能!

お祭りで欠かせないのが縁日をはじめとした屋台のグルメである。祭り当日は上総大路に100を超える屋台が出店していた。特に多くの来場客で賑わっていたのが、会場の中心となる上総更級公園の西側に設けられていたいちはら国府市だ。

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前項でも登場したが、ここでは市原の誇る名店や人気店を中心に数多くの店舗が屋台を出店していたので、市原グルメを心ゆくまで味わうことができた。僕も何店舗か回ってみたのだが、特に美味しかったものをご紹介しよう。

まずは、養老川漁業協同組合のブースでいただいた鮎の塩焼きだ。

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小湊鐵道で養老渓谷駅に行くと、土日の駅前では養老川で獲った鮎の塩焼きが名物として売られてる。わざわざ養老渓谷まで行かなくても鮎が食べられるとあってかなり賑わっていた。味付けもシンプルかつ絶妙で、何本でもいけてしまいそうな感じだった(笑)。

続いて紹介するのは、JR内房線の八幡宿駅前にある手造りドイツハム・ソーセージの専門店:タンネンバウム(TANNEN BAUM)の屋台だ。ここではドイツで修行してマイスター(国家認定職人)の資格を取得した店主さんによる独自製法のドイツソーセージに加えて、ドイツのパンやビールが味わえた。

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僕は4種のソーセージの盛り合わせとブレーツェルを注文したのだが、どれも絶品だった。(帰りは運転しなければいけなかったのでビールは泣く泣く自重したが。。。)

重度のドイツフリークにも関わらず、恥ずかしながら僕はこのお店の存在を今回のイベントで初めて知った。まさかドイツのソーセージやパンが味わえるお店が近くにあるとは思わなかった。一目でこのお店のファンになってしまったので、これから足繁く通うことになりそうだ。

ほかには、上総いちはら国府祭りで定番(?)となっている味噌もつ煮込みホルモン焼きうどんなどもいただいた。どちらもビールが欲しくなる脂ギッシュな美味さだった。

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ちなみに、市原市には「いちはら国府ブランド」というものが存在する。

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これは市が名産品として認定している食品のことなのだが、市原市ならではの味が堪能できる。全部で30品目以上が登録されているが、その一部は上総更級公園の裏にあるアリオ市原でも購入できる。

さて、その「いちはら国府ブランド」の1つとして認定されているのが梨ジュースなのだが、いちはら国府市では情熱市原ワンハートの屋台でその味を楽しむことができた。

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梨の果汁100%のジュースで、スッキリした味わいがソーセージやもつ煮込みで脂まみれになった口内を優しくリフレッシュしてくれた。容器を再利用すれば+100円でおかわりもできたのも魅力で、ここも多くの来場客で賑わっていた。

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平安時代にタイムトリップ!時代絵巻行列

上総いちはら国府祭りは2日間とも12:00から20:00の日程で開催されていたのだが、そのオープニングイベントとなったのが、祭りの目玉の1つでもある時代絵巻行列だ。

先述したように、来年2020年は『更級日記』の作者である菅原孝標女が市原を旅立ってから100年目の節目となる。また、鎌倉幕府を開いた源頼朝は再起を図って館山から鎌倉に向かう際に市原にも立ち寄ったのだが、八幡宿駅前にある古社・飯香岡八幡宮の逆さイチョウをはじめ多くの伝説を残したことでも知られる。

それらを記念して上総いちはら国府祭りでは上総更級公園の前を走る上総大路を舞台にして、菅原孝標女の旅立ちをテーマに雅の衣装で着飾った貴族たちによるパレードと、源頼朝の出陣をテーマに勇壮な鎧兜を身にまとった鎌倉武者たちによるパレードが開催されている。

どちらも平安の時代にタイムトリップした雰囲気が味わえるので、一押しの催し物となっている。

さて早速だが、写真を交えつつ2つのパレードの様子をお伝えしよう。まずは、菅原孝標女の旅立ちをテーマにしたパレードから。輿の中央に鎮座しているピンク色の衣装の女性が菅原孝標女役の方だと思われる。

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続いて、源頼朝の出陣をテーマにしたパレードだ。輿の上に堂々と座っているのが源頼朝役の方だ。

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パレードはステージが設けられた上総更級公園のイベント会場が終着地となる。ステージに辿り着いた後は、それぞれの行列の代表者(菅原孝標と源頼朝)が祭りの開催を祝して祝辞を述べていた。

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何とも雅かつ迫力のある催しだった。これだけでも一見の価値はあるだろう。

圧巻の大迫力!山鉾・山車の巡行

続いて催されたのが山鉾・山車の巡行だ。これは、東日本最大級の大きさを誇る山鉾とこの近辺に実在した上総国分寺の七重塔を模した山車が、先ほどの時代絵巻行列の後を続いて巡行するパレードだ。

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ちなみに、山鉾は地元のサッカーチームに所属する少年たちを始めとする若い有志によって引かれていた。市原の熱気を間近に体感できる迫力のあるイベントだった。

時代絵巻行列は上総大路のアリオ市原側から始まったのだが、山鉾・山車の巡行は上総更級公園側から始まった。加えて、アリオ市原の先を抜けると上総更級通りまでUターンして戻ってきたので1往復したことになる。次回観光や撮影などで訪れる際は参考にしていただくといいだろう。

祭りはまだまだ続く…

ここまで時代絵巻行列と山鉾・山車の巡行の様子を紹介してきた。しかし、これらはあくまでも上総いちはら国府祭りのオープニングイベントに過ぎない。ここから多くのイベントが次々と開催され、祭りの迫力や熱気はさらにエスカレートしていくのである。

例えば、山鉾・山車の巡行の後に開催される練り踊り

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このイベントでは総勢1000名を超える参加者たちが音楽に合わせて踊り歩く。上総いちはら国府祭りの前身だった市原市民祭りでも30回以上に渡って開催された伝統の踊りだが、その様はただただ圧巻である。

また、祭りの概要で前述したように、ちばYOSAKOIハロウィンパレードなども開催されるので、老若男女問わず広く楽しめる。

2日目のフィナーレイベントでは、夜の上総大路をライトアップされた山鉾・山車・神輿が共演しながら巡行するイベントも開催される。そして、最後は上総更級公園内を舞台に15分間の花火大会で締めくくられる。

今回は時間の都合で最後まで紹介ができなかったが、上総いちはら国府祭りの魅力はまだまだこんなものでは収まらない。

ちなみに、フィナレーイベントでは下記の画像の神輿が、その後ろにある山鉾と山車と共に巡行する。ライトアップされて夜の更級通りを巡行するその姿はただただ神々しい。

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来年も同じ時期に開催されるので、祭りのクライマックスはぜひご自身で訪問して体感していただくといいだろう。

今回使用した撮影機材

今回の上総いちはら国府祭りの撮影でも、カメラはもはやお馴染みとなった相棒であるオリンパスのミラーレスカメラ:OM-D E-M5 Mark IIを使用した。

ただし、レンズに関しては別だ。最近入手した大口径望遠単焦点レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8を大半の写真の撮影で使用した。特に、パレードの撮影では大活躍だった。

入手してからまだ日が浅いため、実戦で使うのは実は今回の祭りが初めてだった。「ハイグレードポートレートレンズ」と言われるだけあって、決まれば極上の描写とボケ味が得られるのだが…使いこなすのが本当に難しいレンズだ。。。

被写体との間合いや被写界深度の深さなど、今まで使用してきたレンズとは全く違っていたので、慣れるのに結構苦労した。完全に使いこなすようになるにはまだしばらく鍛錬が必要になるだろうが、これからも積極的に実戦に投入していきたいと思う。

M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8の画像

総評

今回は市原市が誇る最大級の大祭:上総いちはら国府祭りの模様をお届けしてきた。

この記事で今回紹介してきたのはあくまでも祭りの最初の部分だけだったので、その全貌を掲載することはできなかったが、少しでも上総いちはら国府祭りの魅力を楽しんでもらえたら嬉しく思う。

今回の祭りを通して、市原市民の逞しさを垣間見ることができた。あれほどの被害に遭ったにも関わらず1カ月足らずで復興を遂げて、しかもこれほどの大祭を成功させた。

関東地方の中心地でもあった上総国としての面影は今はほとんどないのかもしれない。しかし、これほど逞しい人たちがこの市にはこんなにもいるのだから、僕らの市原市はきっと大丈夫だろう。

僕も市原市民としてこの市のためにできることを少しずつでもやっていこうと思う。奇しくも、小湊鐵道が完全復旧したとのことなので、とりあえずはこれから「ICHIHARA ART × MIX 2020」に向けて小湊鐵道沿線の完全攻略記事をまとめてみようと思う。

ぜひ期待して楽しみに待っていてほしい!

上総いちはら国府祭りに関する最新情報はこちら

上総いちはら国府祭りに関する最新情報は下記に記載した祭りの実行委員会の公式サイトに更新されているので、次回の開催時に訪問する際は参考にしていただくといいだろう。

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Alan Drake HallerTravel Journalist
千葉県在住、40代独身のトラベルジャーナリスト。【世界はそれでも美しく、希望に溢れている。】をモットーに、旅行先や千葉近郊での散歩中に発見した「希望」が持てる光景の写真作品や、旅写真ライフをさらに充実させるのに役立つ情報を発信しています!