31年にも及んだ平成が終わり、令和の時代がやってきた!
早速「令和婚」と称して、改元日の5月1日に結婚したカップルが多くいたらしい。新天皇陛下の即位で列島全体が幸せムードに包まれているのはとても良いことだ。
そういえば「結婚」といえば、先月の下旬に地元である市原市の高瀧神社でとても華やかなイベントが開催されていた。春の例大祭である「花嫁祭り」である。
今回の記事は千葉県・市原市の高瀧神社で4月21日に開催されていた春季例大祭「花嫁祭り」を見学した時のレポートをお届けする。
ぜひあなたも平安時代を思わせる「花嫁祭り」の煌びやかな雰囲気を楽しんでもらえると嬉しい。
高瀧神社とは?
まず、高瀧神社の概要について軽く触れておこう。
高瀧神社とは千葉県市原市の南部にある高滝地区に鎮座する古社のことだ。高滝湖の畔に建っていることから、大ヒットアニメ映画『君の名は。』の劇中に登場した糸守町のような風景を楽しめる隠れた観光スポットだ。
高滝神社の歴史は古く、平安時代前期に編纂された歴史書の『日本三代実録』にも神社に関する記述が登場している。
主祭神は天皇家の皇祖神として知られる天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫、邇々芸命(ににぎのみこと)である。また、それとは別の2柱の神も合祀されている。
本来の社殿は養老川の上流にある高瀧(粟又の滝)の岸に鎮座していたらしい。しかし、古代に洪水で御神体が流されたのを機に、元々この地に安産・子育ての女神として鎮座していた玉依姫(たまよりひめ)の社殿に移ってきたらしい。
そして、平安時代末期に当たる1171〜1175年に、京都の賀茂別雷神社(上賀茂神社)、賀茂御祖神社(下鴨神社)から分霊を勧請し、別雷命(わけいかづちのみこと)を合祀したのが経緯だ。
つまり、高瀧神社には、邇々芸命、玉依姫、別雷命の3柱からなる神が祀られているのだ。
鎌倉・室町・安土桃山の時代を通して地元から厚く信仰され続け、江戸時代に当たる天正19年(1591年)には徳川家康から10石の朱印地の寄進を受けている。その後、明治6年(1873年)に郷社に、同13年(1880年)には県社に指定され、現在は高滝地区の200戸余の氏神として信仰を集めている。
高瀧神社で得られるご利益
高瀧神社の御祭神は3柱存在するが、有名なのが玉依姫(たまよりひめ)だ。
玉依姫は高滝地区で古くから信仰されてきた女神だが、安産と子育ての霊験(ご利益)があることで知られている。そのため、神社の境内には妊婦や小さな子供を連れたカップルがよく参拝に来ている。
安産と子育ての霊験を象徴するものとして、「底なし袋」の信仰がある。これは、妊婦が底が縫い合わされていない筒抜けの巾着袋を身に付けると安産の効果が得られるというものだ。
神社の境内にはこの「底なし袋」が用意されており、今でも利用する夫婦は多いという。なんでも、無事安産が達成できたら、新しい「底なし袋」を作って神社に納めるのが習わしだそうだ。
春の例大祭「花嫁祭り」
そんな高滝神社では、大きな祭り(例大祭)が年に2回開催される。4月下旬に開催される春の例大祭と、10月下旬に開催される秋の例大祭だ。
春の例大祭は「花嫁祭り」とも言われている。祭りのクライマックスに、その一年間に高滝地区に嫁いできた花嫁が新郎と共に花嫁和装姿で集団参詣して、子宝と家内安全を祈願する「花嫁行列」が執り行われることが、祭りの名前の由来だ。
なお、高瀧神社は子育てのご利益もあることから、「花嫁行列」の前座として、平安時代の衣装を身にまとった子供たちによる「稚児行列」も開催される。
「花嫁行列」と「稚児行列」は春の例大祭を代表するメインイベントとして、市内外から多くの観光客を集めているのだ。
祭りの日の朝の様子
さて。高瀧神社に関する概要の説明はこのぐらいにして、いよいよ「花嫁祭り」のレポート本編に移るとしよう。
高瀧神社・春の例大祭の催し自体は午前10時から始まる。しかし、祭りのメインは午後1時半から行われる「稚児行列」と「花嫁行列」のため、午前中の境内はそれほど混み合っていない。
僕は祭りの開幕直後の午前10時過ぎに神社を訪れたのだが、やはり人はまだまばらで、平時とさほど変わらない様子だった。朝の高瀧神社は空気が澄んでいて、とても清々しい。
だが、拝殿の方に目を向けると、神社の神主さんや巫女さん、そして氏子の方々と思われるご一行が、祭りの成功を神々に祈願する儀式が行われていた。
先ほど「平時とはあまり変わらない様子」と記述した。しかし、神社の境内をよく回ってみると、平時とは明らかに違う様子が随所に見受けられた。
まず、本堂の左手奥にあるお堂。ここには八坂神社や稲荷神社などの神々が分祀されているのだが、平時は各拝殿の扉は閉じられている。
しかし、祭りのこの日に限っては、なんと拝殿の扉が全開放されている!
この様子を垣間見るだけでも、この春の例大祭自体がとても強いご利益があることが感じ取れるだろう。
ありがたや〜ありがたや〜
また、祭りの日は拝殿にも変化が見られる。こちらには神輿が収められているのだが、平時は閉じられている。しかし、祭りの日はこちらも全開放されているので、高瀧神社が所有する3基の神輿の姿をそれぞれ直接拝むことができるのだ。
当然のことだが、神社に勤める巫女さんたちも祭りの準備に向けて大忙しだ。
なお、湖に面した大鳥居から拝殿下の階段に至るまでの参道には、縁日の屋台も多数設けられていた。ただし、開幕直後は参拝客自体があまり少なかったので人はまばらだったが、花嫁行列が行われる午後は多くの参拝客や観光客でごった返していた。
参道を抜けて拝殿に至る階段を上がる途中の右脇には高瀧神社の社務所があるのだが、祭りのこの日はその側に地元の有志によるお茶出しのサービスが提供されていた。(基本無料とのことだが、感謝の気持ちとして心づけを渡すこともできる。)
僕も午前中に一通り神社の境内を回って、光や構図、行列の進行ルートなどの確認が終わった後に、ここでしばらく休憩させてもらっていた。お茶をサービスしてくれたのは気さくな方々ばかりで、祭りの進行に関することをかなり詳しく教えてもらうこともできたのでとても感謝している。
そして、社務所前で時間を過ごしていると、徐々に境内に人が増えてきた。祭りのメインイベントである「稚児行列」と「花嫁行列」の始まりが近いことを悟ったので、お茶出しの方々に感謝を告げて、僕は事前にリサーチしていた撮影スポットに移動したのである。
稚児行列
午後1時の少し前頃から社務所の前が徐々に慌ただしくなってくる。春の例大祭のメインイベントの1つである「稚児行列」が間もなく始まるからだ。
社務所の中では事前に参加の予約をした親子が、平安時代のお稚児さんの衣装に着替えるなどの準備を進めていた。
衣装の着替えが終わった子供たちから順に社務所前に整列して、親御さんたちと共に「稚児行列」の始まりを待つ。その周りには、多くの観光客や見物客、そしてカメラマンたちが様子を見守っている。
午後1時半を過ぎた頃、「稚児行列」の行進が始まった。
「稚児行列」のルートは次の通り。
まず、社務所の脇にある道を通って湖に面した道路に向かう。そこから湖岸の道を伝って神社入口の大鳥居まで移動し、参道を通って拝殿に向かって階段を上る。
拝殿に辿り着くと、拝殿とその裏の本殿の周りをぐるっと回る。そして、拝殿の正面に戻り、最後に拝殿の中に入って参拝を済ませるという流れだ。
参拝が終わった後はそのまま解散となるが、神社の境内の至る所では我が子の晴れ姿を祝う親子の姿を多く見かける。
子供の健やかな成長を願うのが「稚児行列」の目的だが、遠い昔に自分も家族から七五三などでこんな風に祝ってもらったなと、懐かしい記憶が呼び起こされた。子を思う親の心はいつの時代も素晴らしいものだ。
花嫁行列
「稚児行列」が終わったすぐ後に、春の例大祭で最大のメインイベントである「花嫁行列」が始まる。
その年に結婚したカップルが和装の婚礼衣装を身にまとって登場するのだが、今年は3組の若夫婦が行列に参加していた。
ちなみに、「花嫁行列」の進行ルートは「稚児行列」の時と全く同じだ。社務所の脇から湖岸の道路を伝って大鳥居に至り、参道から拝殿に向かって階段を上がっていく。
下記の画像は、その際に先頭を進んでいたご夫婦を階段上の脇(狛犬の側)から望遠レンズで撮影させてもらったものだ。
この日は薄曇りの空だったのだが、「花嫁行列」が階段に差し掛かった辺りで急に雲間から光が射し込んできた。まるで天上の神々たちも夫婦たちを祝福しているような光景だった。
階段を上った後も「稚児行列」と同じく、拝殿と本殿の周りを一周してから拝殿の中に入って参拝を済ませるという流れだ。
拝殿での参拝を終えると、「花嫁行列」最後のイベントとして記念写真の撮影に移る。行列に参加した夫婦全組が集まり、拝殿の正面、それから左手側の順で2度に渡って撮影を進める。
集合の記念撮影が終わると、「花嫁行列」および春の例大祭「花嫁祭り」のイベントは全ての行程を完了したことになる。
最後の最後に参加されたご夫婦のツーショットを撮らせてもらった。
この時は周りに人集りがすごかったこともあり、残念ながら1組のご夫婦を撮影するので精一杯だった。しかし、とても素晴らしい表情を撮らせてくれた。
撮影に応じてくれたお二人と、参加された他2組のご夫婦には心からの感謝とお祝いの言葉を送りたい。
どうか末長くお幸せに!
総評
今回の記事では高滝神社の春の例大祭「花嫁祭り」のレポートをお届けした。
今回は祭りの開幕直後から参加させてもらったが、初めての参加にも関わらず、その長丁場の撮影に見合うだけの素晴らしい写真と体験を手にすることができた。
最後の帰り際に社務所や氏子の方々から「またおいで」と言ってもらえたのだが、こういう温かい気持ちを感じられるだけでも訪れた価値は十分にあったと思う。
とても満足度の高い撮影旅行だった。
ところで。
社務所で聞いたのだが、この高瀧神社では今回お伝えした春の例大祭以外にも、秋の例大祭が毎年開催されているらしい。秋の例大祭では喧嘩神輿や流鏑馬が催されるのだが、今年(2019年)は10月20日(日)が開催予定とのこと。
社務所や氏子の方々からも誘っていただいたので、ぜひとも秋の例大祭にも参加したいと思っている。その際にも改めてレポートをお届けする予定なので、乞うご期待いただければ幸いだ。
補足:高瀧神社へのアクセス案内
今回紹介した高瀧神社へは電車(小湊鉄道)または車で訪問できる。ただし、駐車場はあまり広くなく、例大祭ということもあって駐車できる数に限りがある。そのため、高滝や市原市を応援するという意味でも、可能な限り小湊鉄道でご訪問いただくことをおすすめする。
高瀧神社の最寄駅は小湊鉄道の高滝駅だ。東京駅からは下記のルートで訪問できる。
【ルート1】東京駅→(JR総武線(快速))→千葉駅→(JR内房線)→五井駅→(小湊鉄道)→高滝駅
【ルート2】東京駅→(JR京葉線)→蘇我駅→(JR内房線)→五井駅→(小湊鉄道)→高滝駅
※所要時間はどちらのルートも片道2時間ほどだ。
高滝駅からは徒歩5分ほどで高瀧神社の入口である大鳥居に辿り着くことができる。下記に高瀧神社周辺の地図を載せておくので、訪問の際はぜひ参考にしてほしい。
ちなみに、小湊鉄道の沿線には今回紹介した高瀧神社以外にも多くの見所が点在している。下記の記事ではその一部を紹介しているので、ぜひ今回の記事と合わせて目を通していただくといいだろう。
ぜひあなたも小湊鉄道に乗って、高滝やその他の沿線に散らばる魅力を探し歩いてみてほしい。