PEN-Fの購入を見送った6つの理由

PEN-Fカタログ表紙画像 Camera

長年世話になっていたニコンの一眼レフカメラからオリンパスのミラーレスカメラ:OM-D E-M5 MarkⅡにカメラの機材システムを乗り換えてから早1年余り。

オリンパスが採用するマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラ(マイクロミラーレス)は、フルサイズ規格の一眼レフカメラの半分以下の重量と容積しかなく、その分フットワークが軽くなるので旅行や取材などの撮影に重宝しているのでとても満足している。

肝心の画質も非常に良くできており、撮影する場所に十分な光量がありさえすればフルサイズに遜色ない優秀な解像感や色のりを得られる点も非常に気に入っている。

すっかりオリンパスのカメラの虜になったわけだが、この度活動の幅を広げるためにステップアップも兼ねて上位機の購入を検討することにした。

候補としてはOM-D E-M1 MarkⅡとPEN-Fの2機種を挙げており、どちらにするかで散々迷っていたが、最終的にOM-D E-M1 MarkⅡを選び、PEN-Fは候補から外すことにした。

両機種とも非常に良くできた優秀な機種ではあるのだが、色々と調査・検討した結果、PEN-Fは自分の用途や撮影スタイルに合わないということが判明したからである。

今回はPEN-Fが自分に合わないポイントを6つにまとめて解説していこうと思う。

これから新しいレンズ交換式ミラーレスカメラとしてOM-Dを購入するか、それともPENにするかで迷われている方にとって少しでも参考になれれば幸いだ。

この記事は完全に僕個人の主観に基づいて執筆しているため、人によっては意見が分かれる部分も出てくるだろう。その点をあらかじめご了承の上で記事を読み進めていただけると嬉しい。

PEN-Fの購入を見送った理由①ファインダー倍率が小さい

ファインダー倍率の大きさはそのまま撮影時のフレーミングのしやすさに直結する。

そのため、なるべく大きな倍率のファインダーが欲しいところだが、PEN-Fのファインダー倍率は最大1.23倍である。

これはOM-Dのエントリー機であるE-M10 MarkⅢのものと同じ倍率である。

つまり、PEN-Fはカメラボディ単体で12万円以上もする高額なハイクラス機であるにも関わらず、その半分近い価格(約7万円)の比較的安めなエントリー機であるE-M10 MarkⅢと同程度のファインダーしか搭載していないのだ。

決して小さすぎることはないのだが、価格面を考慮しても、PENのフラグシップを名乗るからにはせめて僕の愛機E-M5 MarkⅡの1.48倍は搭載して欲しかった。

もちろんフラットタイプのPENのボディにファインダーを搭載するのは技術的に難しいということは重々承知しているが、PENのフラグシップ機がエントリー機と同じファインダー体験しか楽しめないのはとても残念だ。

PEN-Fの購入を見送った理由②グリップがなく持ちにくい

グリップの形状はそのままカメラのホールディングのしやすさに影響し手ぶれの制御にも直結するのだが、PEN-Fにはグリップがない。

一応PEN-Fには最大でシャッター速度5段分の補正能力を持つ5軸手ぶれ補正機構が搭載されてはいる。

しかし、グリップがないと、僕のように手の大きな人間ではホールディングが安定せずぶれやすくなってしまうため、せっかくの手ぶれ補正機構の効果が低減してしまう。

かといって外付けグリップを装着してしまうと、カメラ全体のスタイリングの統一感が崩れてしまい、一気に不恰好になってしまう。

また、レザー製のボディーケースを装着できなくなるため、ボディの保護という面でも不利になる。

デザインチームには単に格好だけではなく持ちやすさや撮影しやすさにも重点を置いた設計をして欲しかった。

PEN-Fの購入を見送った理由③操作性がイマイチ

PEN-Fのボディ前面には「クリエイティブダイヤル」が搭載されている。これは色作りや仕上がりのモードを変更できるもので、ダイヤルを回すことでアートフィルターや後述するカラー/モノクロプロファイルに設定が変えられる。

しかし、このクリエイティブダイヤルは非常に操作がしにくい形状に作られている。ダイヤル形状が通常の横向きではなく縦向きなので、2本の指を使わなければ回せないのだ。

また、PEN-Fはグリップがないためホールディングが安定せず、人によっては無意識にダイヤルへ指がかかってしまうこともマイナス要因だ。

加えて、モード変更の状態を電子ビューファインダーや液晶モニターでは確認ができず、操作時はダイヤルを必ず目視しながら設定する必要がある。ファインダーから目を離すことなく各種設定を直感的に行えるのがミラーレスカメラのメリットの一つだが、クリエイティブダイヤルではそれができないため非常に不便だ。

カメラ操作に熟練するほど、その操作性の悪さにストレスを感じてしまうのだ。

PEN-Fのデザインはクラシックカメラを現代風にアレンジしたものだと言われているが、フイルム時代の名機・初代PEN-Fとはとても似ても似つかない。どちらかというと、Leica Ⅲなどのバルナックライカに似ている。

しかし、バルナックライカの操作系はお世辞にも使いやすいとは言えず、やがて現在まで続くM型ライカに取って代わられたという経緯がある。

確かにバルナックライカのデザインは秀逸だが、使いにくくて廃れた操作系をあえて現代で真似しても意味はないだろう。このPEN-Fはクラシックカメラをまともに扱ったことがない人が見よう見まねで当時のデザインに似せて作ったカメラなのかもしれない。

PEN-Fの購入を見送った理由④防塵防滴でない

雨の日にも魅力的な被写体は数多く存在する。

カメラとレンズが防塵防滴に対応してさえすれば悪天候下でも撮影を楽しむことができ、その分魅力的な被写体を見つけられるチャンスも増えるのだが、残念ながら PEN-Fのボディには防塵防滴機構は搭載されていない。

そのため雨の日の撮影などには満足に使えず、晴れの日のストリートスナップなどの限定された環境下でしか撮影ができない。

雨の日でもお構いなく撮影に出かけ、びしょ濡れになりながらも撮影に没頭してしまう僕のような人種からすると、これは痛い。

オリンパスにはPROラインなどの防塵防滴仕様の高画質で優秀なレンズがあるのだが、肝心のカメラ側に防塵防滴機構が搭載されていなければせっかくの防塵防滴レンズもその本領を発揮させてあげることはできない。

おそらくPEN-FはPREMIUMライン(防塵防滴非対応だが非常に高画質な単焦点レンズシリーズ)のレンズとセットで使用することを想定して開発されたのだろう。

しかし、価格が10万円以上もする高価なカメラであるのだから、雨の日にも安心して撮影が楽しめるようにせめて簡易的でも防塵防滴機構を搭載して欲しかった。

PEN-Fの購入を見送った理由⑤カラー/モノクロプロファイルは編集時に使いたい

PEN-Fにはカラー撮影時とモノクロ撮影時にそれぞれの写真の色合いや仕上がりを微調整しつつ追い込むことのできるカラー/モノクロプロファイルという機能が搭載されている。

この機能自体は非常に興味深いのだが、強いて言うと僕はそういうことは撮影時ではなく、撮影後のRAW現像やレタッチ時に徹底的に追い込みたい。

なぜなら撮影時には他にもっと気を使うべきことがたくさんある。

色作りは撮影後でもできるが、ライティングや露出の追い込み、構図作りは撮影時にしかできない。

それに、絵作りはMacでのRAW現像やレタッチ時に行う方が落ち着いて取り組めるし、撮影時よりも多くの調整ができるので、より自分のイメージに合った色合いに近付けることができる。

僕は撮影と同じくらい編集にもこだわるタイプ(撮影50%・編集50%)で、MacでのRAW現像やレタッチはカメラで撮影する時と同じくらい大好きで、ワークフロー的にも絶対に欠かせない工程だと考えている。

そのため、本来Macで味わうことができる楽しみを省略してまで、撮影時に絵作りを追い込む必要はないというのが、僕の制作スタイルの基本になっている。

補足だが、E-M1 MarkⅡのRAWファイルであれば、カメラに付属するRAW現像ソフトの「OLYMPUS Workspace」での画像編集時にモノクロプロファイルを使った絵作りができる。(カラープロファイルは残念ながら非対応。)

PEN-Fで撮影時に絵作りをするよりも、E-M1 MarkⅡのRAWファイルを「OLYMPUS Workspace」で画像編集時に追い込む方が自分のスタイルに合っているようだ。

PEN-Fの購入を見送った理由⑥ボディ前面の花文字Fの刻印がなく、非売品のステッカーシールのみ

そして最後にこれが何気に切実な問題なのだが、PEN-Fのボディ前面には花文字の「F」が刻印されていない。

「PEN-F」と名乗っている以上、僕のようにカメラの歴史やデザインにもこだわる人間からすると、これはデザイン上の致命的な欠点だと言える。

元々このカメラは1963年に製造されたハーフサイズフィルム一眼レフの初代PEN-Fにオマージュしてその名を冠されたのであるが、PEN-Fには初代PEN-Fにあった象徴でもある花文字「F」の刻印がない。

以前CP+2017(横浜で年1行われる写真・カメラ業界の見本市)でオリンパスの開発者に聞いてみたところ、ボディ前面の装甲が薄いために花文字「F」のような複雑なデザインを刻印できなかったとのこと。

花文字「F」の刻印はPEN-Fのデザインを完成させる最後のアクセントとして最も重要なものなだけにとても残念だった。

しかし、それ以上に残念だったのは、その欠けた花文字「F」の刻印を補填するための処置だった。

CP+2016のオリンパスブースではオリンパス製カメラを持った来場者に花文字「F」のデザインを型どったステッカーシールが配られていた。

このステッカーを貼り付ければPEN-Fのデザインを完成できたのだが…

問題はそのステッカーは非売品で現在はもう入手がほぼ不可能ということ。(一時期はヤフオクで5000円の高値で転売されていたこともある。)

有料でもいいからせめて販売ぐらいはして欲しかったのだが、非常に残念でならない。

総評

今回は僕がPEN-Fの購入を見送った理由を綴ってみた。

一言にまとめると、PEN-Fが提供する世界観が自分の撮影スタイルや好みに合っていなかったということに尽きる。

PEN-Fは決して悪いカメラではなく、デザインも機能も人によっては十分に楽しめる良機ではあるのだが、自分には合わなかった、ただそれだけのことだ。

同じオリンパスでもPENとOM-Dとでは商品コンセプトが大きく異なっているが、僕は典型的なOM-D型の人間なのだろう。

やはり撮影は自分の用途や感性に合ったカメラでこそ楽しみたいと思った次第である。

あなたもカメラを選ぶときは、単に機能性や人気の高さを指標にして流行りのものを何となく選ぶのではなく、自分の撮影目的や撮影スタイルをしっかりと把握した上で自分の感性に合ったものを選んで欲しいと思う。

それこそがあなたにとっての真の愛機になるだろうから。

ちなみに僕としては、特に旅行へ携帯する旅カメラということであれば、今回話題にしたPEN-FよりもOM-D E-M5 MarkⅡの方を強くお薦めする。

このカメラは僕も旅行撮影の主力機として愛用しているが、あらゆる場面で活躍してくれるのでとても頼もしい相棒だ。

OM-D E-M5 MarkⅡのメリットについては下記の記事にまとめたので、最適な旅カメラをお探しの方は今回の記事と合わせて参考にしてもらえると嬉しい。

最高の旅カメラ:僕がOM-D E-M5 Mark IIを愛用する7つの理由