百花繚乱〜初春の新宿御苑をお花見巡り〜

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春爛漫である。今年もついに桜の季節がやって来た。

僕は毎年この時期になるとほぼ必ず新宿御苑を訪れる。港区の三田で生まれ幼少期を過ごし、新宿御苑には両親や祖母によく連れて行ってもらった楽しい思い出があるせいか、春が来るといつも、どこよりもまず先に新宿御苑へ意識が向いてしまうのだ。

今年もつい先日だが、新宿御苑を訪れてきた。

園内の桜が満開を迎え、平日にも関わらず多くの花見客や外国人観光客でごった返していた。僕も花見がてら園内を巡りつつ花の撮影を存分に楽しむことができ、大いにリフレッシュすることができた。

そんなわけで、今回は初春の新宿御苑で撮影した花の写真をお届けしていく。もちろん主役は桜だが、園内ではほかにも色々な種類の可愛らしい花々が見頃を迎えていたので、それらも一緒に楽しんでいただければ嬉しい。

Alan
Spring has come!!! 今年もついに花好きには特に心が躍る季節がやって来た!新宿御苑の園内には桜をはじめ色々な花々が見事に咲き乱れている。今回は中望遠マクロレンズで撮影した写真を中心に約30枚の作品を掲載したので、あなたもぜひ写真と共に新宿御苑で咲き誇る花々の魅力を存分に味わってもらえればと思う。 @alan-d-haller

新宿門付近

新宿御苑には全部で3箇所に入園ゲートが用意されているのだが、そのうち新宿門はJR新宿駅から最も近くアクセスが便利なことから、入園客が最も多いゲートとして知られる。

新宿御苑・新宿門

新宿門の脇にはインフォメーションセンターがある。ここでは園内の地図をもらえるほか、園内で見頃を迎えている花や野鳥などの情報が聞ける。園内に足を踏み入れる前に、まずはここでその日のおすすめの見所に関する情報を収集しておくといいだろう。

ちなみに、新宿御苑の最新情報や園内地図のPDFは下記の公式サイトでも入手できる。ご来園の際は合わせてお役立ていただけるといいだろう。

一般財団法人国民公園協会 新宿御苑

Alan
見所が記載された園内マップのPDFは「発行物」のタブからダウンロードができるよ。過去の地図も入手できるので、初夏や秋の散策に向けた予習にも最適だ。 @alan-d-haller

さて。

その新宿門を抜けると、僕の眼前には見渡す限りの満開の桜(ソメイヨシノ)が咲き乱れていた。既に散り始めているものもあったのか、風が吹く度に桜吹雪になる様はとても風流だった。

一方で、枝に接近して見てみると、まだ蕾の状態でまさにこれから開花に臨もうとしているものもあった。人間と同じように、花も咲くタイミングが違うからこそ多様性があって面白いのかもしれない。

こちらは手前に咲いていた赤色の花とその葉を前ボケに使って撮影したもの。季節外れだが赤と緑のクリスマスカラーをまとった桜もファンタジックで素敵だ。

丸花壇に向かう途中、一本の桜の木の中に面白い光をまとった蕾があったので撮影してみた。

かなりの強い逆光状態だったため露出の制御には少々手こずったが、太陽の光に手を伸ばすように伸びる蕾の強い生命力を切り取ることができた。

丸花壇

新宿門から北東ゲートである大木戸門へ進んでいくと、重要文化財に指定されている旧洋館御休所の前に来た辺りで、円形の花壇が見えてくる。ここには色とりどりのチューリップが植えられているので、マクロレンズで接写撮影を楽しむのにもってこいだ。

背景ボケの色合いにさえ注意すれば、とても綺麗な写真が撮れる。1輪の花にフォーカスしたい時は、縦位置で撮影するのがおすすめだ。構図が整理されて花の存在感をより強調できる。

このように低い位置からローアングルで撮影するのも面白い。太陽に向かって生き生きと伸びるチューリップの躍動感を感じられる。

実は下記の画像は失敗作の副産物だったりする。

画像の解像力を高めようとハイレゾショットを試みたのだ。ハイレゾショットでの撮影時は露光中に被写体を微動だにさせてはいけないのだが…残念ながら、この日は常に強い風が吹いており花が揺れてしまうため、ハイレゾショットを成功させることはついにできなかった。

しかし、合成でできあがった画像を見てみると、多重露光のようなファンタジックな仕上がりになっていてびっくり。思わぬ偶然で生まれた写真だが、こういうのもたまには良いだろう。

風景式庭園〜下の池

丸花壇を南に下ると、広い芝生にのびのびと育った巨樹が見所の風景式庭園が見えてくる。ここでは家族連れやカップを中心に、多くの人が思い思いのスタイルで花見を満喫していた。

中には、引率の先生と一緒に訪れてきただろう幼稚園児たちが遊び回っている姿も見られた。どこか懐かしい気持ちを呼び起こしてくれる微笑ましい光景だ。

風景式庭園を東に向かうと、新宿御苑のルーツとしても知られる徳川家康の家臣である内藤家の庭園「玉川園」の面影が残る玉藻池に至る。この一帯は灯篭や木橋などが置かれ、日本式庭園独特の風情を味わえることから外国人観光客にも人気だ。

その玉藻池の隅ではこんな風景も見られる。木々から散った花びらが水流で流されて溜まる花筏(はないかだ)だ。この時は弧を描きながら留まる花筏の先端に、運良くカルガモが来てくれた!まさに千載一遇の好機で、とても素晴らしいシャッターチャンスをくれたカルガモくんに感謝だ。

奇跡はそれだけでは終わらなかった。上記の花筏とカルガモの写真を撮影した場所から真下に池を眺めると、さらにそこにはまたしても素敵な光景が広がっていた。木々の影や散った花びらが漂う水面の中に、周囲で咲き誇る桜が映り込んでいたのだ。

まさに水鏡の中の世界。この時はPLフィルターは使わなかった。しかしそれでも、凪が訪れる一瞬を狙うことで、十分に映り込みを綺麗に撮ることができた。

次に訪れたのは下の池。玉藻池からはバラ花壇でも有名な整形式庭園を抜けてさらに南下すると辿り着けるが、下の池周辺にはシダレザクラやヤエベニシダレなどのしだれ桜が楽しめることでも知られる。僕が訪れた時はまだ5〜6分咲きほどだったが、これから本格的な見頃を迎えるだろう。

こちらは上記の写真と同じシダレザクラの蕾を朱色の葉を背景ボケにしつつ撮影した。桜色と朱色、同じ暖色系にまとめることで、しだれ桜の色合いと蕾の生命力をより強調できたと思う。たとえ満開でなくても、工夫次第で素敵な写真は撮れるのだ。

中の池〜桜園地

下の池の隣には中の池がある。この周辺もまた多くの花見客が集まる有名スポットで、常に人でごった返している。下記の写真を撮影した時はまだあまり混雑はしていなかったが、昼過ぎくらいになると中の池周辺、特に橋はものすごい人で混み合っていた。

池の脇ではウコンの花を前景に、桜とドコモタワーのコラボレーションを拝める場所もある。

そして、中の池を渡って南ゲートの千駄ヶ谷門に向かう途中に辿り着くのが桜園地だ。ここではソメイヨシノだけではなく、オオシマザクラやカンザンなどの様々な種類と色彩の桜を一度に楽しめる。

桜吹雪が舞う一方で、新しい葉が芽生えている幹もある。ここは命の息吹を身近に感じられる場所だ。

また、桜園地の見所は桜だけではない。新宿御苑には様々な種類の野鳥が住んでいるのだが、ここではヒヨドリやメジロなどが見られる。

ちなみに、上記の画像の鳥はヒヨドリ。この時は高倍率ズームの望遠側(300mm相当)を使ったので、野鳥撮影には焦点距離がやや足りず、それに加えて愛機のOM-D E-M5 Mark Ⅱは動体撮影が苦手ということもあり、かなり苦戦した。しかし、比較的低い位置にある枝に来た時を狙うことでなんとかモノにすることができた。

魚眼レンズに交換して桜園地を散策していると、下記のような面白い光景に遭遇した。天の太陽に至る道を作るように桜の幹が弧を描いて伸びていた。魚眼のデフォルメ効果も影響しているのだろうが、なんとも不思議な光景だった。

日本庭園〜上の池

桜園地を西に向かうと、水の流れに沿ってデザインされた回遊式庭園の日本庭園に辿り着く。ここでは旧御凉亭などの歴史建造物や茶室から水と桜のコラボレーションを楽しめるのが魅力だ。

旧御凉亭の脇には、新海誠監督のアニメ映画『言の葉の庭』でメインのロケ地となった東屋や藤棚もある。この日の東屋は桜に覆われており、これはこれでとても風情を感じられた。

ちなみに、作中でよく描写されていた時期は梅雨だが、以前に僕はその時期にも新宿御苑を訪れている。その時の様子は下記の記事で語っているので、『言の葉の庭』のファンの方は合わせて目を通していただくと良いだろう。

【聖地巡礼】言の葉の庭 at 雨に彩る初夏の新宿御苑

初春とは違った新宿御苑の魅力が楽しめるはずだ。

東屋からさらに西に進むと上の池に至る。この周辺もヤエベニシダレやハナカイドウなど桜を始め、様々な種類の花が見られる。

下記はヤマブキを背景ボケにしつつハナカイドウを撮影したものだ。濃いピンクと黄色のコントラストがとても美しかった。

こちらはオドリコソウ。日本庭園の片隅で青いスカートを翻しながら舞う踊り子のように可憐に咲いていた。注意深く地面に目を向けて歩かなければ、きっと普通に通り過ぎていただろう。

そして最後は、ムラサキハナナ。これは上の池から北上して、母と子の森を抜けたぐらいの場所に咲いていた。日光が当たっている花と日陰になっている花のコントラストが絵になるような美しさだった。

大温室

新宿御苑のお花見巡りはまだ終わらない。実は、北西の大木戸門の側には大温室という施設があるのだが、ここでは徹底した温度・湿度管理の下で世界各地の花や木が栽培されている。

最後にその一部を紹介しよう。

まずは、ハイビスカス。沖縄でもよく見られる情熱的で美しい色彩の花だが、ハワイの国花としても知られている。

続いて、こちらはヒスイカズラ。フィリピン諸島が原産で、名前通りのエメラルドグリーンの色合いが印象的な花だ。受粉はオオコウモリによって行われるらしい。

さらに、こちらはカヤツリグサ。古代エジプトで記録媒体として使われていた最古の紙「パピルス」の原材料になった植物で、パピルスはこの植物の茎の繊維から作られた。つまり、人間の歴史はこの植物から始まったと言える。

最後に、こちらは熱帯性スイレン。通常見かける温帯性スイレンにはない青や紫色の花を楽しめるのが魅力だ。

これらの植物は大温室で栽培されているものの一部に過ぎない。他にも、熱帯でしか見られないカカオやコーヒーの木や、ブッダ(釈迦)に由来のある沙羅双樹や菩提樹、食虫植物のウツボカズラなど、日本ではまずお目にかかることのできない珍しい花や木が数多く観察できた。

大温室には新宿御苑の入園チケットがあれば追加料金なしに見学できるので、お花見ついでに異国の花や木にも親しんでみるのも一興だろう。もしかしたら思わぬ発見があるかもしれない。

総評

今回は桜を中心に初春の新宿御苑で楽しめる多彩な種類の花々を紹介してきた。僕の写真で花たちの魅力を少しでも伝えることができたら嬉しく思う。

おそらく新宿御苑のソメイヨシノは今週末で見納めになるだろう。しかし、その後にはしだれ桜やカンザン、ケンロクエンキクザクラなどが見頃を迎えるので、今月一杯までは桜の織りなす風景を楽しめるはずだ。

また、桜以外にもハナミズキやヤマブキなどはもちろん、大温室に行けば世界各国の花も楽しめる。

あなたもぜひ新宿御苑を訪れて花のある風景を満喫してほしい。日常に疲れた時、癒しがほしい時、新宿御苑の花々はいつもあなたを快く迎えてくれるはずだ。