【レンズレビュー】OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro|ネイチャー撮影にも重宝する小型中望遠マクロレンズの魅力を作例と一緒にご紹介

OM SYSTEM(旧オリンパス)が手掛けているロングセラーの中望遠マクロレンズ、M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro

マクロレンズと聞くと、多くの人は「特殊用途のレンズ」という印象を抱くだろう。花や昆虫、あるいは商品撮影など、用途が限定された“玄人向け”の存在だと捉えられがちである。しかし、本レンズはその固定観念から少し距離を置いた位置にあるレンズだ。

等倍マクロ撮影に対応する本格的なマクロレンズでありながら、防塵防滴構造を備え、屋外でのネイチャー撮影を強く意識した設計が採用されている。さらに、フルサイズ換算120mm相当という中望遠画角は、接写用途に留まらず、被写体との適度な距離感を活かした汎用的な撮影にも対応可能だ。

一般的な中望遠単焦点レンズとは違って、華やかなボケ表現や情緒的な描写で魅せるタイプのレンズではない。だが、過酷な環境下でも確実にピントを合わせ、被写体を正確に写し取る信頼性は、このレンズならではの持ち味だ。

本記事では、M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroの特徴や使用感を詳しく解説していく。後半にはこの中望遠マクロレンズを使って撮影した作例もたっぷり掲載するので、レンズ選びの一助となれば幸いである。

Alan
この中望遠マクロレンズはMFT(マイクロフォーサーズ)システムの初期に登場した1本だが、僕にとってもマクロ撮影や接写の楽しみ方を教えてくれた思い入れのあるレンズだ。性能バランスがとても良いので、主力がM.ZUIKO PROレンズ群に移った現在でも、それらと一緒にネイチャー撮影に持って行くことが多い。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroってどんなレンズ?

まず初めに、M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroの概要を簡単に整理しておこう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroを一言でまとめると、 「撮影条件を選ばない、信頼性重視の中望遠マクロレンズ」という表現がしっくりくる。

特徴を次の3点に分けて見ていくと、このレンズの概要が把握しやすくなるだろう。

なお、焦点距離やF値、最短撮影距離などの専門用語に関しては、以前共有した下記の記事で詳しく解説しているので、そちらを参照してほしい↓

【2026年版】脱・初心者!OM SYSTEM/オリンパスで旅行におすすめのマイクロフォーサーズ用交換レンズまとめ 20選

接写とマクロ撮影を得意とする特殊レンズ

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、等倍(1.0倍)のマクロ撮影に対応した本格的な中望遠マクロレンズである。撮像面(イメージセンサー)からピントが合う被写体までの最短撮影距離はわずか19cm。非常に高い接写性能を備えているので、小さな花や昆虫、自然物のディテールを大きく写し取ることが可能だ。

最大撮影倍率1.0倍という数値は、マイクロフォーサーズ(MFT)規格において特に重要な意味を持つ。MFTで等倍マクロ撮影を行う場合、センサー面に写る大きさはフルサイズ換算で2倍相当となる。つまり、被写体を実寸以上のサイズでフレーム内に捉えることができ、肉眼では見落としがちな微細な質感や構造まで克明に描写できるということだ。この点は、マクロ撮影を本格的に楽しみたいユーザーにとって大きな魅力となる。

また、本レンズはレンズ先端から被写体までの距離であるワーキングディスタンスを比較的確保しやすい設計になっている。つまり、画面一杯に大きく写すために被写体まで極端に近づきすぎる必要がないため、昆虫を驚かせにくく、マクロ用フラッシュの使用時も影を落としにくいという実用上のメリットも大きい。

単に「寄れる」だけではなく、屋外での実戦を見据えた距離感と操作性が考慮されている点こそ、このレンズが単なる接写用レンズではなく、「信頼性重視のマクロレンズ」と評価できる理由である。

ネイチャー撮影に心強い防塵防滴ボディ

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は防塵防滴構造の信頼性も折り紙付き。単に「防塵防滴に配慮」と言及するだけではなく、保護等級としてIPX1相当の防滴試験を正式にクリアしており、高い防塵性能も備えている。そのため、室内で使う一般的なマクロレンズと違い、野外での使用を明確に想定して設計されているのだ。

花や昆虫を被写体とするネイチャー撮影では、天候や足場を選べない場面が少なくない。朝露に濡れた草地や湿度の高い森の中、小雨が降り出した状況など、撮影環境は常に変化する。そうした困難な条件下でも撮影を継続できるという点は、実用面において大きなアドバンテージとなる。

もっとも、この高い防塵防滴性能はレンズ単体で完結するものではない。OM-5やOM-1といった防塵防滴仕様のボディと組み合わせてこそ、本来の効力を発揮する点には注意が必要だ。対応ボディとの組み合わせによって初めて、カメラシステム全体としての耐候性が成立する。

マクロ撮影は、地面すれすれの低い姿勢や、被写体に集中するあまり周囲への注意が疎かになりがちな撮影ジャンルでもある。そうした状況でも、機材への過度な気遣いを減らし、被写体に集中できる。こうした安心感こそが、本レンズが「ネイチャー撮影に心強いマクロレンズ」と言える理由である。

Alan
なお、実使用における防塵防滴性能は、IPX1という数値から想像される以上の余裕を感じている。強い雨や水しぶきがかかる状況で何度も使用してきたが、動作に支障を感じたことは一度もなかった。あくまで僕個人の実体験に基づく印象ではあるものの、ネイチャー撮影で想定される悪天候であれば安心して使えるレンズだと感じている。

スナップやポートレートにも活躍する中望遠画角

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、マクロレンズでありながら、フルサイズ換算で120mm相当となる中望遠画角を備えている。この画角は、被写体との距離感を保ちやすく、背景を整理しながら主題を浮かび上がらせるのに適している。接写専用に閉じた画角ではないため、マクロ以外の用途にも柔軟に対応できる点が特徴だ。

旅行スナップ撮影においても、この中望遠画角は意外なほど扱いやすい。遠くの被写体を引き寄せる圧縮効果により、雑多な背景を整理しやすく、被写体を明確に切り取れる。また、旅先で出会ったネコなどの小動物を撮影する際にも重宝する。不用意に距離を詰める必要がなく、警戒心を与えにくい点は、実地での撮影において大きな利点となる。

もっとも、本レンズは一般的な中望遠単焦点レンズのように、ボケ味や描写の華やかさで魅せるタイプではない。ポートレート撮影においても、主役を強調するための大きなボケ量を期待するより、画面全体の整理や被写体の輪郭を丁寧に描写することに向いている。マクロレンズとしての設計思想が色濃く反映されており、表現性よりも再現性を重視した描写傾向だ。

このように、本レンズの中望遠画角は、スナップや小動物、控えめなポートレート撮影までを静かにカバーする。マクロ撮影を主軸にしつつ、状況に応じて中望遠レンズとして使える柔軟性もまた、本レンズの実用性を支える重要な要素である。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroの外観と機能

次に、M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroの外観と機能を見ていこう。

はじめにこちらがレンズフードを装着したまま収納した状態だ。

OM SYSTEM オリンパス 交換レンズ 中望遠マクロレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroの外観。これは専用の伸縮レンズフードを装着したまま収納した状態だ。中望遠レンズとは思えないほどコンパクトに仕上がっている。

フードとキャップを取り外した状態はこちら。

OM SYSTEM オリンパス 交換レンズ 中望遠マクロレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
レンズキャップとフードを外した状態。口径が控えめな分、シルエットがすっきりとしており、スマートな印象を受ける。

本レンズは 鏡筒などの外装にプラスティック素材が多用されているため、中望遠レンズながらとても軽い。野外での取り回しも良好だ。

レンズ先端には口径46mmのフィルターアタッチメントを搭載。NDフィルターやPLフィルターなどの各種レンズフィルターが装着できるので、風景やスナップの撮影でもフィルターワークを駆使した多彩な表現が楽しめる。

こちらは別売りの専用レンズフード「LH-49」をレンズ本体に装着したところ。

OM SYSTEM オリンパス 交換レンズ 中望遠マクロレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
別売りの専用レンズフードを装着したところ。撮影時は基本的にこの状態で使用する。本レンズはフードをはじめとした様々なギミックが搭載されている。

レンズ本体と同様、レンズフードの素材にはプラスティックが使われている。

なお、扱い方がとても特殊なのもこのレンズフードの特徴。レンズ本体に装着した後は手前から奥へ押し出すだけで遮光モードに移行できる。

OM SYSTEM オリンパス 交換レンズ 中望遠マクロレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
専用レンズフードは前後に移動させて使用する。手前から奥へ押し出すと遮光モードになり、撮影の準備が整う。

そのため、急に現れた昆虫を撮る際などの突発的なシーンにも素早く対応できる。収納時も奥から手前に引くだけと簡単なので、逆付けする手間も不要だ。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroを、僕がメイン機として使っているOM-D E-M1 Mark IIIに装着した状態が次の画像。

OM SYSTEM オリンパス 交換レンズ 中望遠マクロレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro OM-D E-M1 Mark III
メイン機のOM-D E-M1 Mark IIIに装着したところ。接写やマクロ撮影を安定した精度で行うなら、大きくて握りやすいグリップを搭載したカメラで使用したい。

サイズ感はF1.8シリーズの単焦点レンズと比べるとわずかに長いが、重量は散歩やハイキングなどで十分快適に使える範囲に収まっている。ただし、マクロ撮影や接写の成功率を高めたいなら、OM-5系やOM-1系など実用的なグリップを搭載した中型以上のミラーレス一眼と組み合わせるのがおすすめだ。

次に、鏡筒の様子を詳しく見てみよう。以前紹介した標準マクロレンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro と違って、本レンズの鏡筒にはフォーカスリミットスイッチが搭載されている。

OM SYSTEM オリンパス 交換レンズ 中望遠マクロレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
鏡筒にあるフォーカスリミットスイッチ。ダイヤルを回すことで、AFの駆動距離を指定できる。また、等倍マクロ撮影「1:1」の設定もここで行う。

これはオートフォーカス(AF)が駆動する有効距離を制限することで、接写時や望遠撮影時のピント合わせを効率よく行えるようにする機能になる。

例えば、ダイヤルを「0.19-0.4m」と合わせると、センサー面から19〜40cmまでの距離の間でしか合焦しなくなるため、接写時に40cmよりも遠くにあるものにピント位置が引っ張られてしまう誤作動を防げる。これによって、近くにある目的の被写体に素早く効率的にピントを合わせられるというわけだ。

ちなみに、「1:1」にダイヤルを合わせると、MFT規格における等倍マクロ撮影(フルサイズ換算2倍相当)が可能になる。

なお、フォーカスリミットスイッチの隣には表示窓が設置されている。

OM SYSTEM オリンパス 交換レンズ 中望遠マクロレンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
フォーカスリミットスイッチの右隣にあるのが表示窓。マクロ撮影時はここにある目盛りを参考にしながら行うと、狙い通りの表現が得やすくなる。

ここでは設定中の撮影距離や撮影倍率を確認することができる。この表示窓があることで、現在のレンズ設定が自分の目的とする表現に適しているかを常に把握しながら撮影を進められるというわけだ。

加えて、先述どおり、本レンズにはIPX1の防滴性能と優秀な防塵性能が実装されている。

実売5万円以下で入手できる比較的手頃なレンズながら、アウトドアシーンやマクロ撮影に役立つ機能がこれでもかと充実している点が、長年にわたってOMユーザーから支持されている理由だ。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroのグレートなところ

このパートでは、僕が実際に使ってみて、M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで素晴らしいと思った点を共有しよう。

画角がネイチャー撮影に使いやすい

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro がネイチャー撮影に向いている理由のひとつが、フルサイズ換算で120mm相当となる中望遠画角だ。この画角は、被写体との距離を適切に保ちながら、背景を整理して主題を際立たせるのに都合がよい。花や昆虫といった自然被写体は、不用意に距離を詰めると逃げられたり、構図が煩雑になったりしやすいが、本レンズであれば被写体にあまり干渉することなく、ありのままの姿を自然に記録できる。

また、中望遠特有の適度な圧縮効果によって、背景の要素をまとめやすく、被写体を画面の中で素直に浮かび上がらせることができる点も大きな利点だ。広角レンズのように構図作りに神経質になる必要がなく、自然物の形や質感に集中しやすい。

さらに、この画角はマクロ撮影に限らず、森や草原で見つけた自然物を切り取る用途にも適している。被写体を大きく写すだけでなく、周囲の空気感を程よく省略できるため、ネイチャー撮影において扱いやすい“ちょうどいい距離”を提供してくれる。望遠すぎず、寄りすぎないこの画角こそが、本レンズを野外で積極的に使いたくなる大きな魅力だ。

マクロ撮影に役立つ機能が充実

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、単に等倍まで寄れるだけのマクロレンズではなく、マクロ撮影の成功率を高めるための機能が実用本位で備えられている点が大きな魅力だ。

とくに有効なのが、鏡筒に搭載されたフォーカスリミットスイッチである。先述どおり、このスイッチを使うことでAFが駆動する距離範囲を任意に制限できるため、接写時に背景へピントが迷う無駄な動きを防げる。結果として、狙った被写体に素早くピントを合わせやすくなり、撮影テンポが大きく向上する。

また、本レンズには撮影距離や撮影倍率を確認できる表示窓が設けられている点も見逃せない。現在の設定が等倍付近なのか、それとも少し引いた倍率なのかを視覚的に把握できるため、意図したフレーミングと実際の撮影結果のズレを減らすことができる。

こうした機能はスペック表を眺めるだけでは地味に見えるかもしれない。しかし、野外でのマクロ撮影では、被写体や環境が刻々と変化する。そうした状況下でこそ、無駄な操作を減らし、撮影に集中できるこれらの機能が効いてくる。本レンズは、マクロ撮影を理屈ではなく実戦で支えてくれる一本と言えるだろう。

ピント精度と再現性が非常に高い

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro を使っていて強く感じるのが、ピント精度の高さと再現性の安定感である。マクロ撮影では、被写界深度が極端に浅くなり、わずかなズレが結果を大きく左右する。そのため、ボケの量や描写の派手さ以上に、「狙った位置に確実に合うかどうか」が重要になる。

本レンズは、一度合焦したポイントが外れにくく、微細な被写体に対してもピント位置が安定している印象だ。コントラスト任せに迷うような挙動が少なく、AFを使った撮影でも安心してシャッターを切れる。結果として、撮影者の意図と実際の写りとのズレが小さく、同じ条件で撮影した際の再現性も高い。

こうした特性は、連続してカットを重ねる場面や、条件の変わりやすい野外での撮影において特に効いてくる。たとえば、風で揺れる花や動き回る昆虫を相手にする場合でも、ピント合わせに神経を削られる場面が少ない。派手さはないが、結果を積み重ねていくうえで信頼できる挙動を示してくれる。

華やかなボケ表現で印象に残るレンズではないかもしれない。しかし、撮影者の狙いを裏切らず、安定した結果を返してくれる。このピント精度と再現性の高さこそが、本レンズを実戦向きのマクロレンズたらしめている最大の強みと言えるだろう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroのイマイチなところ

良い点だけを紹介してもフェアではないので、「これはちょっと不満」と気になった点についても忖度なしで共有しておこう。

材質がアウトドア用途には少し心許ない

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、防塵防滴構造を備えた実戦的なマクロレンズである一方で、鏡筒外装にプラスティック素材が多用されている点は、人によっては気になる部分かもしれない。軽量化やコストバランスを考えれば合理的な選択ではあるが、金属鏡筒の採用が主流のM.ZUIKO PROレンズと比べると、手に取った際の剛性感や安心感では一歩譲る印象を受ける。

実際の使用において、すぐに破損するような脆さを感じるわけではない。日常的なネイチャー撮影や散策レベルであれば、実用上の問題が生じる場面はほとんどないだろう。しかし、岩場や足場の悪い環境、機材同士がぶつかりやすい状況では、どうしても扱いに気を使ってしまう。

とくに本レンズは、防塵防滴性能を備え、野外での使用を強く意識した設計であるがゆえに、外装素材とのギャップを感じやすい側面がある。「気兼ねなく使える」ことと「心理的に安心できる」ことは必ずしも同義ではなく、その点で好みが分かれる可能性はある。

もっとも、この軽さと取り回しの良さは、長時間の持ち歩きや接写時の安定性というメリットにも直結している。剛性感を最優先するか、機動力を重視するか。この材質に対する評価は、本レンズをどのような環境で使うかによって変わってくるだろう。

描写は「主役級」ではない

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro の描写は、良くも悪くも自己主張が控えめだ。解像力は高く、被写体のディテールを正確に捉える能力も十分に備えている。しかし、ボケ味の美しさや情緒的な描写で観る者を惹きつける、いわゆる「主役級」のレンズかと問われれば、その答えは少し異なる。

本レンズの描写は、華やかさや色気で印象を作り込む方向ではなく、被写体を忠実に写し取ることを最優先した設計思想に基づいている。コントラストや色乗りも過度に強調されることはなく、どこまでも冷静で抑制的だ。そのため、写真そのものにドラマ性や演出を求める方にとっては、物足りなさを感じる場面もあるだろう。

一方で、この控えめな描写傾向は、マクロ撮影においては大きな強みでもある。被写体の形状や質感、構造を誇張せずに再現できるため、記録性や再現性が求められる場面では安心して使える。レンズの個性が前に出すぎない分、撮影者の意図や被写体そのものが画面に反映されやすい。

本レンズは、写真表現を牽引する主役ではなく、撮影者を支える脇役としての完成度が高いレンズだと言える。描写で魅せることを期待するか、結果の安定性を重視するか。この点は、使い手の価値観によって評価が分かれるポイントだろう。

等倍マクロ撮影時の操作がかなり面倒

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro で等倍マクロ撮影を行う場合、操作性のハードルは一気に上がる。フォーカスリミットスイッチを「1:1」に合わせると等倍撮影が可能になる一方で、AFは実質的に使用できなくなる。しかも、フォーカスリングによるMF操作も無効化されてしまう。これは仕様上の制約であり、本レンズでの等倍マクロ撮影では避けて通れないポイントだ。

その結果、ピント合わせはレンズ側ではなく、撮影者自身が担うことになる。具体的には、手首や体を前後にわずかに動かしながら、ピントが合う位置を探るという原始的な方法を取らざるを得ない。被写界深度が極端に浅くなる等倍撮影では、ほんの数ミリの移動でピント位置が大きく変わるため、この作業は想像以上に神経を使う。

加えて、野外でのマクロ撮影では、被写体が風で揺れたり、姿勢が制限されたりと、条件が安定しないことも多い。そうした不安定な状況下で体を微調整しながらピントを追い込む作業は、正直なところかなり面倒だと感じる場面も少なくない。

もっとも、この操作性の問題はレンズ設計の古さに起因している可能性が高い。というのも、本レンズの後に登場したOM SYSTEMのマクロレンズでは、等倍以上のマクロ撮影時でもAFが使用可能になっているからだ。それらのレンズに比べると不便さは否めないが、等倍撮影時の描写には目を見張るものがあるということは断言できる。

Alan
等倍マクロ撮影時の制約には僕も正直かなり苦労した。特に、ダイヤルを「1:1」に固定したまま体を前後させてピントを追い込む操作には、現場で何度も泣かされた。II型が出るなら、ぜひ改善してほしいポイントだ。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroにおすすめの方

メリットとデメリットが一通り把握できたところで、このパートではM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroにおすすめの方を考察していこう。

アウトドアで花や昆虫の撮影に挑戦したい方

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、野外で花や昆虫と向き合うネイチャー撮影に挑戦したい方に適した一本だ。防塵防滴構造を備えているので、朝露の残る草地や湿度の高い森の中など、環境条件が安定しないシーンでも安心して使える。もっとも、その性能はOM-5やOM-1といった防塵防滴仕様のボディと組み合わせてこそ本領を発揮する点は理解しておきたい。

フルサイズ換算120mm相当の中望遠画角は、被写体に過度に近づかずに済むため、昆虫や小動物を驚かせにくい。加えて、比較的余裕のあるワーキングディスタンスによって、自然な距離感を保ったまま被写体のディテールに迫れる点は、ネイチャー撮影では大きな武器となる。

また、ピント精度と再現性の高さにより、条件の変わりやすい野外でも安定した結果を得やすい。派手な演出よりも、確実に被写体を捉えることを重視したい方にとって、本レンズは信頼できるパートナーとなるだろう。これからネイチャー撮影を始めるなら、ぜひとも最初に選んでおきたいレンズの1本だ。

汎用性の高い中望遠レンズを探している方

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、マクロ撮影専用に閉じた存在ではなく、中望遠単焦点レンズとしての汎用性も重視したい方に向いた1本だ。フルサイズ換算120mm相当という画角は、被写体を引き寄せつつ背景を整理しやすく、自然の動植物だけでなく、旅先でのスナップや、ドキュメンタリー調ポートレートの撮影にも活用できる。

中望遠らしい適度な圧縮効果により、雑多な背景を簡潔にまとめやすく、被写体を画面の中で落ち着いて配置できる点は、スナップ撮影でも大きな利点となる。また、被写体を威圧しない距離を保ちやすいため、人物撮影においても過度な干渉感が生まれにくく、ありのままの姿を自然に記録できる。

もっとも、本レンズはボケ味や情緒的な描写で主張するタイプではない。だが、その分、被写体を素直に写し取る再現性と安定感があるので、1本で対応できる撮影ジャンルを広げたい方にとっては扱いやすい存在だ。マクロを主軸にしつつ、中望遠レンズとしても活躍できる柔軟性は、本レンズならではの魅力と言えるだろう。

ジオラマや出品用商品を見栄えよく撮りたい方

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、鉄道模型やガンプラなどのジオラマ撮影や、フリマアプリ・オークション用の商品撮影など、被写体を正確かつ整然と写したい用途にも適したレンズだ。細部までしっかり描写できるため、形状や質感、仕上がりの状態を誇張せずに伝えたい場面で力を発揮する。

とくに有利なのが、レンズ先端から被写体までの距離であるワーキングディスタンスに比較的余裕がある点だ。これにより、フラッシュやLEDライトを使った撮影時でも、レンズ自体の影が被写体に映り込みにくい。光をコントロールしやすく、ライティングの自由度が高いことは、商品撮影では大きなメリットとなる。

また、スポットフレアが発生しにくい設計なのも魅力だ。スポットフレアとは、ミニカーのように中心部が暗く周辺部が明るい被写体を絞り込んで撮影する際に、絞りの形状の光漏れが映り込む現象のこと。本レンズではその発生が抑制されているため、ライトボックスの中に置いてミニチュアを撮る際も、余計な映り込みを防ぎつつ安定した結果が得やすい点は見逃せない。

なお、今回は作例としてジオラマや商品撮影の写真を掲載していないが、理屈の上では非常に相性が良い用途であることは間違いない。見栄えを演出するよりも、状態を正確に伝えたいと考える方にとって、本レンズは堅実な選択肢となるだろう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで撮影した作例の紹介

ここからはM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroを使って実際に僕が撮影した写真の作例を掲載していく。

作例画像にはRAW現像時に露出の微調整は施してあるが、色合いや収差補正には極力手を加えていないため、レンズ本来のものに近い仕上がりが確認できるだろう。

OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。園内の北側にある丸花壇で毎年春に花を咲かせるチューリップを撮影した。F2.8という控えめな開放F値であっても、こういった花の撮影では被写体を強調するのに十分なボケ描写が得られる。
OM-D E-M5 Mark II/絞り優先AE(F2.8・1/3000秒)/+0.5EV/ISO 200/分割測光/WB自動/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。園内の北東にある玉藻池の端で、水面を優雅に漂うカモを桜の花筏と一緒に捉えた。弧状の花筏がカモの通り過ぎた跡を表しているような光景に趣を感じた。こういったネイチャースナップ撮影とも本レンズは相性がいい。
OM-D E-M5 Mark II/シャッター速度優先AE(F13・1/30秒)/-0.5EV/ISO 200/分割測光/WB自動/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
市原市某所にて。小湊鐵道の撮影で列車を待っていた間に傍らで見かけた菜の花とミツバチを撮影した。余裕のあるワーキングディスタンスを活かすことで、ハチに警戒感を持たせることなく自然な姿を撮り納めることができた。
OM-D E-M5 Mark II/絞り優先AE(F2.8・1/1000秒)/ISO 200/分割測光/WB自動/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。園内の北東にある大温室で池に咲いていた熱帯スイレンを撮影した。前ボケを適度に配置してトンネル構図を作ることで、スイレンの存在感を強調した。このレンズは花の撮影にとにかく強い。
OM-D E-M5 Mark II/絞り優先AE(F2.8・1/350秒)/ISO 200/分割測光/WB自動/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。同じく大温室にてフィリピン原産のヒスイカズラを撮影した。マメ科に分類される植物で、エメラルドグリーンに彩る花弁がとても美しい。本レンズはカラーバランスも良好で、花の色合いを忠実に再現してくれる。
OM-D E-M5 Mark II/絞り優先AE(F3.5・1/60秒)/+0.5EV/ISO 200/分割測光/WB自動/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。園内の東にある整形式庭園で、今上天皇陛下の皇女、愛子様の御名を冠したバラを記録した。撮影時は晩秋の雨上がりの直後だったが、防塵防滴構造によって残った雨露や水滴を心配することなく接写できた。
OM-D E-M5 Mark II/絞り優先AE(F4.0・1/2000秒)/-0.5EV/ISO 200/分割測光/WB曇天/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。園内の中央部にある風景式庭園で、紅葉した桜を前景にしつつ、奥の東屋にいた女性をシルエットにして表現した。本レンズの換算120mm相当という画角と圧縮効果は、スナップ撮影にも活用しやすい。
OM-D E-M5 Mark II/絞り優先AE(F4.0・1/350秒)/-0.5EV/ISO 200/分割測光/WB曇天/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。園内の南部にある中の池の付近で、散った紅葉を至近距離から等倍マクロ撮影で撮影した。本レンズ特有のピント操作には苦労したが、フルサイズ換算2倍相当という迫力の大画面で葉脈を克明に記録できた。
OM-D E-M1 Mark III/絞り優先AE(F5.6・1/90秒)/-1.0EV/ISO 200/分割測光/WB太陽光/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。中の池の付近にあるサザンカの花のしべを接写した。うにょうにょと動き出しそうなしべの様子が、「風の谷のナウシカ」のクライマックスで王蟲が作り出した黄金の草原のように見えた。本レンズではこのようなマクロ表現も楽しめる。
OM-D E-M1 Mark III/絞り優先AE(F5.6・1/350秒)/-0.5EV/ISO 200/分割測光/WB太陽光/60mm(換算120mm相当)
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 作例
東京・新宿御苑にて。同じく中の池の付近で秋に彩るタムケヤマの枝葉をクローズアップ撮影した。6枚の翼を広げた熾天使をイメージして仕上げてみた。マクロ撮影に慣れると世界の新しい側面が見えてくるが、その境地まで本レンズは寄り添ってくれる。
OM-D E-M1 Mark III/絞り優先AE(F5.6・1/180秒)/-1.0EV/ISO 200/分割測光/WB太陽光/60mm(換算120mm相当)

総評

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、派手さや演出力で主張するレンズではない。だが、撮影条件を選ばず、被写体を正確に捉え続ける信頼性という一点において、非常に完成度の高い中望遠マクロレンズである。

等倍マクロ撮影に対応しながら、防塵防滴構造を備え、野外での実戦投入を強く意識した設計は、OM SYSTEMらしい思想の表れと言える。フォーカスリミットスイッチや表示窓といった実用的な機能は、地味ながら撮影の成功率を確実に押し上げてくれる。一方で、等倍撮影時の操作性には明確な癖があり、万人向けとは言い難い側面もある。

それでもなお、本レンズが長年にわたって支持され続けてきた理由は明快だ。自然の中で被写体と向き合い、確実に成果を持ち帰るための道具として、揺るぎない安心感がある。表現を誇張するのではなく、事実を誠実に写し取る。その姿勢に共鳴できるなら、M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro は、長く信頼できる相棒となるだろう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroのレンズ本体はこちら↓

専用の別売りレンズフード「LH-49」はこちら↓

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Alan Drake HallerTravel Photo Journalist / Photographer
千葉県在住、40代独身のトラベルフォトジャーナリスト兼光画作家。【旅行の写真作品と情報発信で人と地域を元気にする!】を信条に、ブログやウェブメディアで活躍中。地元の千葉を中心に散歩や旅行の道中で撮影した写真作品のほか、街歩きやカメラ生活が楽しくなるお役立ち情報なども公開しています!総合旅行業務取扱管理者およびフォトマスター検定1級の所持者。