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【レポート】OM SYSTEM使いがPENTAX K-1 Mark IIで千葉を撮り歩く|フルサイズ一眼レフの作例と実写検証

PENTAX K-1 Mark II 一眼レフ体験会 千葉

フルサイズ一眼は自分の写真生活にとって本当に必要な存在なのだろうか?

写真の世界では、35mm判フルサイズセンサーはしばしば“上位”のフォーマットとして語られる。高い解像力、豊かな階調、浅い被写界深度。それらは確かに魅力的であり、一眼レフやミラーレスに関わらず、多くの写真愛好家やプロフェッショナルが最終的に行き着く先としてフルサイズ機を選択しているのも事実である。

僕自身もその評価を頭では理解している。しかし同時に、OM SYSTEMのMFT(マイクロフォーサーズ)ミラーレスユーザーである自分には拭いきれない疑念があった。自分の撮影スタイルや身体感覚、そして日々の写真生活のリズムにとって、それは本当に最適な選択なのか?

そんな折、リコーイメージングがフルサイズ一眼レフ「PENTAX K-1 Mark II」の撮影体験会を千葉で開催するという情報を知った。この機を逃す手はない。答えは、理屈ではなく、自分の身体で確かめればよいと考え、僕はイベントへの参加を決めた。

本稿は、普段はOM SYSTEMのMFTミラーレスを愛用している僕が、慣れ親しんだ千葉の街を舞台に、PENTAXのフルサイズ一眼レフを使って半日撮り歩いた記録である。後半では機材の評価に加え、自分とフルサイズ一眼との相性についても整理していきたい。

Alan
本記事で扱う体験会は約1年前の開催である。それでも、実機を試して得た気づきは色褪せていない。フルサイズ一眼の導入を迷っている方の判断材料になればと考え、今回あらためて記事化した。JPEG撮って出しの作例も豊富に掲載しているので、千葉の街を歩く感覚でご覧いただければ嬉しい。

PENTAX一眼レフ体験会とは?

リコーイメージングが主催する「PENTAX一眼レフ体験会」は、事前申込制で無料参加が可能な実写イベントである。参加者は受付で本人確認証(運転免許証やマイナンバーカードなど)を提示し、実機を貸与される形式で、実際の街を舞台に一定時間撮影を行うことができる。

僕が参加した回では、受付はJR千葉駅北口のK.Mビル貸会議室で行われ、貸与機材はフルサイズ一眼レフのPENTAX K-1 Mark IIとFA Limitedレンズ2本(31mmおよび77mm)であった。撮影時間は4時間。参加人数は先着順でおよそ10名前後で、各自が自由に街へ繰り出す形式である。

なお、公式サイトには体験会の告知ページが存在するが、現時点では新規募集は確認できない。今回の記事は、あくまで当時の体験をもとに記すものである。

PENTAX K-1 Mark IIとFA Limitedレンズの概要

今回の一眼レフ体験会で使用した機材についても簡単に紹介しておこう。

PENTAX K-1 Mark IIについて

PENTAX K-1 Mark IIは、35mm判フルサイズセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラである。有効約3640万画素の高解像センサーを採用し、ローパスフィルターレス設計によって細部描写を重視した構成なのが特徴。画像処理エンジン「PRIME IV」とアクセラレーターユニットの組み合わせにより、高感度性能の向上も図られている。

一眼レフの要であるファインダーは視野率約100%の光学式(OVF)。ミラーレスのように電子表示を介さないため表示遅延はなく、光学像を直接確認しつつ、仕上がりをイメージしながら撮影できる点も魅力になっている。さらに、ボディ内5軸手ぶれ補正機構や堅牢な防塵防滴構造を備え、野外での使用を前提とした設計となっている。

加えて、PENTAX独自の仕上がり設定機能「カスタムイメージ」も本機を語るうえで外せない要素である。リバーサルフィルム、銀残し、雅(MIYABI)など、多彩な色表現をJPEG撮って出しで選択できる点は、本機の撮影体験を特徴づける機能と言える。

FA Limitedレンズについて

今回貸与されたのは、HD PENTAX-FA 31mmF1.8 LimitedHD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limitedの2本である。いずれもフィルム時代から続く「Limited」シリーズの系譜に連なる単焦点レンズで、質感の高い金属鏡筒を採用したコンパクトな外観が特徴だ。

31mmは広角寄りの標準域を担い、街歩きでのスナップに扱いやすい画角を持つ。一方の77mmは中望遠域に位置し、被写体を整理しながら立体感を強調しやすい焦点距離である。いずれも開放F1.8と明るく、フルサイズセンサーと組み合わせることで浅い被写界深度を活かした描写が可能となる。

公式では「官能的な描写」という言葉が用いられることもあるが、それは解像力一辺倒ではなく、階調の滑らかさやボケ味の質感まで含めた総合的な描写傾向を指すものだと理解している。PENTAX K-1 Mark IIとの組み合わせにより、その思想がどのように表れるのかも今回の検証ポイントである。

イベントへの参加動機

参加の直接的なきっかけは、リコーイメージングが僕のホームタウンである千葉で一眼レフ体験会を開催することを直前になって知ったことである。慣れ親しんだ街であれば、機材そのものの違いに集中できる。フルサイズ一眼レフを実写で確かめる機会として、これ以上ない条件であったため、僕は参加を決めた。

もっとも、衝動的に申し込んだわけではない。「PENTAX」というブランドには以前から関心があった。特に、同社のデジタル一眼レフに搭載されている仕上がり設定機能「カスタムイメージ」は評判が高く、リバーサルフィルムをはじめとした描写を一度現場で試してみたいと考えていたのである。

また、父がかつてPENTAXのフィルム一眼レフを使っていたことも理由のひとつだ。具体的な機種名を覚えているわけではなく、強い感傷があるわけでもない。しかし、写真という営みの原風景にPENTAXという名前があったことは確かであり、それが小さな関心として残っていた。

一方で、僕はOM SYSTEMのMFT(マイクロフォーサーズ)ミラーレスを作品撮りや取材に用いており、特性を理解したうえで選択している。その立場からすれば、理屈の上ではフルサイズ一眼に大きな必要性は感じていなかった。だが、それは机上の理解に過ぎない。本当に自分に合わないのかどうかは、実際に使って確かめるべきだと考えていた。

実写レポート:PENTAX K-1 Mark IIで千葉の街を撮り歩く

このパートでは、PENTAX一眼レフ体験会の様子を交えつつ、実際にK-1 Mark IIを持って千葉の街を撮り歩いたときの記録をお届けする。一緒にフォトウォークを行うように楽しんでもらえればと思う。

機材を受け取り、千葉の街へ

まずはレンタル予約した機材を受け取るため、イベント会場へ向かった。僕が参加した回では、JR千葉駅北口のK.Mビル内にある貸会議室が受付会場として設けられていた。

ビルの階段を上がり切ると、PENTAXのロゴが掲げられた扉が現れる。

その扉の前に立ったとき、不思議な緊張感を覚えた。これまで論理的に距離を置いてきたフルサイズ一眼レフを、実際に手に取る瞬間が近づいている。「あの〜予約した者ですけど……」と声をかけると、スタッフの方々が穏やかに迎えてくれた。

受付では誓約書への署名と本人確認証の提示を行う。破損や盗難を防ぐための手続きである。本人確認証は控えとして撮影されるが、返却時には確認のうえ削除される仕組みになっていた。

受付の後に案内された机の上には、今回の体験会で使用する機材が並んでいる。

こちらがPENTAX K-1 Mark II

フルサイズ一眼レフらしい外観だが、実際に持ってみると想像していたほどの重さはない。ボディ単体であれば、かつて使っていたAPS-C一眼レフに近い感覚で扱えそうだという印象を受けた。

そして、HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited(左)とHD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited(右)。

いずれもLimitedシリーズを代表する単焦点レンズである。今回はシルバーの個体が貸与されており、普段とは異なる組み合わせで撮影できる点も新鮮だった。

簡単な操作説明を受けたのち、K-1 Mark IIを手に会場を後にする。ここから、半日の検証が始まる。

この先のパートに掲載する作例画像は全て、PENTAX K-1 Mark IIで撮影した撮って出しのJPEG画像を使用している。掲載に際してリサイズのみ行ったが、あとは編集を何も行っていないため、カメラ本来の仕上がりが確認できるだろう。

テストシューティング

受付会場を出ると、まずはPENTAX K-1 Mark IIの設定を確認しながら操作感を身体に馴染ませるため、近くの道路分岐点に設けられた花壇で試し撮りを行った。レンズはHD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limitedを選択する。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/プログラムAE(F5.6・1/250秒)/ISO 200/分割測光/WB自動/リバーサルフィルム

背後に総武快速線の列車を配置しつつ花壇を撮影しただけの、ごく平凡な一枚である。だが、ピントが合った部分の解像は非常に緻密で、架線などの細かな構造物も明瞭に描写される印象を受けた。約2000万画素クラスのMFTミラーレスと比べると、確かに細部の密度感は一段高いように感じられる。

それ以上に心地よかったのは、光学ファインダーの見え味であった。電子表示を介さずに被写体を直接覗く感覚は、一眼レフで写真を始めた頃を思い出させる。余計な情報が入らないぶん、被写体との距離が近い。

続いてローポジションから花壇の花を開放F1.8で撮影する。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F1.8・1/1250秒)/ISO 100/分割測光/WB自動/リバーサルフィルム

開放では被写界深度が浅く、主題が大きく浮き上がる。ボケ味は柔らかく、公式が言う「官能的」という表現も誇張ではないように感じられた。ただし、普段のMFTの感覚でF値を設定するとピントを外しやすい。成功率を高めるため、以降はF3.5やF5.6付近まで絞る場面を意識的に増やすことにした。

基本的な動作を確認したのち、JR千葉駅北口のロータリーから千葉公園へ向かう。道中では撮影テンポを確かめるため、スナップを重ねた。

レスポンスは良好で、突発的に横を走り抜ける自転車も遅延なく捉えられる。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/プログラムAE(F5.6・1/250秒)/ISO 200/分割測光/WB自動/リバーサルフィルム

瞬間を拾うという点では、大きな違和感はない。ここまでは、想像していたよりも扱いやすいという印象であった。

千葉公園

千葉駅のロータリーから10分ほど歩くと、千葉公園の正門、南東側の入口が見えてくる。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/500秒)/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

入口が千葉都市モノレールのレールに沿って配置されている光景は、とても千葉らしいものだと言える。モノレールは千葉市民にとって欠かすことのできない移動手段でもあるからだ。

次は、反対側のアングルから1コマ。公園の入口に咲いていた花をぼかしつつ前景に置き、低い位置からローアングルでモノレールの列車を撮影した。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F6.3・1/1600秒)/ISO 800/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

フルサイズセンサーは被写界深度が浅いため、接写と組み合わせればF6.3まで絞っても十分すぎるくらいの前ボケが得られる。画面全体を立体的に表現するのにとても効果的だった。

ただ、このときはライブビューでモノレールを狙ったが、連写のテンポは明らかにゆっくりである。動体を連続して捉えるにはやや厳しく、シャッターを切るタイミングを慎重に見極める必要があった。ライブビュー連写時の使用感は最近のミラーレスと明確に異なる点のひとつだろう。

次に、公園の入口からほど近くにある綿打池へ向かった。池の周囲は桜の名所としても知られており、毎年春になると多くの花見客で賑わう。

ここでは31mm広角レンズの画角を活かしたスナップ撮影を試してみた。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.2・1/500秒)/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

ベンチで寛いでいた男性の後ろ姿を手前に置き、その奥に池の風景を配置することで、広角レンズらしい広がりを感じる構図を作ってみた。カスタムイメージ「リバーサルフィルム」に設定したが、中央奥にある早咲きの桜も印象的な色合いで記録できた。

池に沿って岸辺を歩いていく。数分ほどで先ほどの画像でも見えた貸しボートの乗り場に辿り着く。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.2・1/400秒)/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

ここでも「リバーサルフィルム」のままで撮影したが、やはりこのカメラの発色は心地よい。ボートの中も本物のリバーサルフィルムで撮ったような色合いで写る。無編集でもどこか懐かしさを感じるような光景に仕上げられた。

ボート乗り場を過ぎると左手側に小高い丘のような場所が見えてくる。この丘は荒木山という。実は、戦前まで千葉公園とその周辺には、旧日本陸軍に所属していた鉄道連隊の演習場が存在したのだが、この荒木山もその名残となる。

鉄道連隊は戦地における鉄道の建設や修理、敵の鉄道の破壊などの工作活動を行っていた特殊部隊のこと。現在の千葉公園には、当時連隊が演習で使用していた施設がいくつか残っている。

荒木山では鉄道連隊のラッパ手たちが訓練を行っていたと伝えられている。そのため元々は喇叭山(らっぱやま)と呼ばれていたが、殉職した荒木大尉を悼んで彼の銅像が建てられたことをきっかけに現在の名前となったとのこと。

Alan
当時の施設としては、架橋演習に使ったコンクリート製の橋脚や、建設演習に使ったコンクリート製のトンネルなどの遺構も残っている。園内を散策するついでに探してみるのもいいかもしれない。

さて、現在の荒木山の頂上からは園内でも有数の眺望が楽しめる。それがこちらの画像だ。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.2・1/1250秒)/ISO 400/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

前景に荒木山の階段、中景に綿打池、そして背景に主題となるモノレールという千葉公園を代表するような構図で撮影できる。今回は時期が半月ほど早かったが、桜のシーズンになれば、周囲が満開の桜で彩られるので、より美しい風景が味わえる。

僕が訪問した際は荒木山を下った麓に早咲きの桜が咲いていた。早速モノレールと一緒に撮影を試みた。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/800秒)/+0.7EV/ISO 400/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

絞りをやや開いてぼかした桜を画像の周辺部に配置することで額縁構図を作成し、その中央のポケットにモノレールを配置した。

フルサイズならではの被写界深度の浅さが活きる場面である。F2.8でも十分にボケるので、構図づくりの自由度は高いと感じた。

続いて、池の杭で休んでいた川鵜を撮影。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/250秒)/ISO 400/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

水面のリフレクションと一緒に写すことで、翼を広げた姿を美術館にある彫像っぽく表現してみた。ファインダーを使った通常のAF撮影であれば、止まっている鳥くらいだったらさほど苦戦することなく捉えられる。

ちなみに、ここで初めて、今回同時に借りたLimited中望遠単焦点レンズのHD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limitedを試してみた。31mmに負けず劣らずの素晴らしい写りで、特に開放付近でのボケ味は、公式が「官能的」と表現する理由が理解できる質感であった。

77mmレンズの描写に感心していると、モノレールが走行してきた。すかさずモノレールを背景にしつつ、先ほどの川鵜と一緒に撮影を試みる。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/100秒)/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

程よい圧縮効果で川鵜とモノレールを同じ画像に収めることができた。加えて、F3.5でも背景のモノレールや木々が驚くほどボケたので、ポートレート撮影などで被写体を立体的に際立たせたいときにも有効だなと感じた。

ちなみに、この千葉公園では、毎年6月の下旬頃に大賀ハスまつりという名物イベントが開催される。荒木山の北にある蓮華亭の周辺では、2000年前から蘇った古代種「オオガハス」が満開になる美しい風景を楽しめる。以前に下記の記事で詳しくレポートしているので、興味がある方はチェックしてみるといいだろう。

【イベントレポート】大賀ハスまつり in 千葉公園|蘇った二千年前の古代蓮を愛でるひと時

それからしばらく撮影をした後、千葉公園を後にして次の撮影スポットとなる栄町方面に向かった。栄町は線路を挟んで千葉公園の反対側にある。公園の入口からモノレールのレールに沿ってJR千葉駅の方へ歩いていくと、連絡用の地下道があるので、まずはそちらへ向かう。

その途中でカスタムイメージ「Gold」を使って撮影してみた。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/500秒)/+0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/Gold

撮影時のような曇りの日でもどこか華やかな印象で表現できることに感動。少しクセがあるので使い所を見極めるのが難しいが、ハマれば面白い表現ができそうだ。

栄町〜千葉市中央公園

モノレールのレール下には栄町方面へ続く地下道が設けられている。次の画像は通路のトンネルを撮影したものだ。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/60秒)/+0.3EV/ISO 400/分割測光/WB曇天/銀残し

感度をベースから2段上げてISO 400に設定したが、この程度の増感であれば、ノイズはほとんど気にならない印象だった。高感度画質を向上させるアクセラレーターの効果もあるようで、こういった暗所でも臨場感たっぷりに記録できた。

なお、ここからしばらくはカスタムイメージを「銀残し」に設定して撮影している。ローキーかつハイコントラストで渋みのある仕上がりにインスピレーションを受けて、人気ゲーム『NieR:Automata』のような荒廃とした世界観を表現したいと思ったからだ。

トンネルを抜けると、その先にはモノレールのジャンクションが威容を見せていた。千葉駅から出発したモノレールが千葉県庁方面と穴川・千城台方面に分岐していく場所だ。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/2000秒)/-0.3EV/ISO 200/分割測光/WB曇天/銀残し

このとき通ったモノレールの外装はカラフルに装飾されていたが、「銀残し」を使って彩度を無理やり落とすことで、人類がいなくなった崩壊後の世界を寂しく自動運行するイメージで表現した。画面下側で点灯する信号はアクセントとして使った。

道路と葭川(よしかわ)を渡ったら、そのままモノレールのレールに沿って歩いていくと、栄町を経由して次の目的地である千葉市中央公園の広場に辿り着く。

こちらの画像はその途中にあるモノレールの栄町駅の近くで撮影したもの。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/250秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/銀残し

川辺に建てられた街灯のポールがアンドロイドたちの墓標のように見えた。この辺りから僕は本格的に「銀残し」が持つ表現の方向性に強く引き寄せられていったのだった。

こちらは栄町での一コマ。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/200秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/銀残し

栄町は千葉の中央区を代表する歓楽街として知られているが、このときはまだ昼前だったこともあり、賑やかな雰囲気はほとんど感じられなかった。寂しげな雰囲気がニーア的な表現によく合う。

レール沿いを10分ほど歩いていくと、千葉市中央公園の広場が見えてくる。ここは千葉駅から伸びる駅前大通りとの合流地点でもある。かつては千葉パルコが広場に面して建っていたことから、人によっては「旧パルコ前広場」の呼び名の方がわかりやすいかも。

普段はパルコがあったときほどの賑わいはあまりない。しかし、この広場では様々なイベントが開催され、冬にはスケートリンクも設置されるため、市民の憩いの場所として長く愛されている。

ここでも僕は「銀残し」で撮影した。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/640秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/銀残し

千葉駅の方面に向けたアングルで、モノレールが前を通り過ぎるのを待って記録。やはりこういった、光学ファインダーで構図を決めてから一発で狙う撮影では、安定した結果が得られた。

今度は広場の中央に高く聳えていたオブジェを同じく「銀残し」で撮ってみた。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/1000秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/銀残し

モノクロではないけどモノクロっぽい色合いが、オブジェの重厚な雰囲気を強調してくれている。解像度も高く、天頂部には鳩が数匹止まっている様子が確認できる。

千葉神社

続いて、千葉市中央公園から東へ歩いて数分ほどの場所にある千葉神社を目指す。僕は千葉の中央区でスナップ撮影をする際は、この神社をお参りついでに撮影で寄らせてもらうことが度々ある。

千葉神社は、「妙見様」として古くから市内外から広く信仰を集めていることで知られている、中央区を代表する古社だ。

創建は平安時代の後期にまで遡る。朝廷を震撼させた平将門の孫で、後に千葉氏の祖となった平良文は、北辰(北極星と北斗七星)の化身であり、一族にとっての戦神でもあった北辰妙見尊星王(ほくしんみょうけんそんじょうおう)をこの地に祀っていた。

そのすぐ後、眼病を患っていた一条天皇がこの祠に使いを出して病気平癒の願を掛けたところ、たちまち病が完治した。そのことから、深く感謝して「北斗山金剛授寺」という寺号を贈ったという。つまり、千葉神社は当初は神社ではなく、「寺」だったのだ。

神社になったのは明治になってから。1869年に政府が発した神仏分離令によって、北斗山金剛授寺は神社として明確に区分され、「千葉神社」として改称されることになった。その後、戦時中の破壊や幾度かの改修を経て現在に至る。

そんなわけで千葉神社の境内を目指して歩いていく。

僕が訪問したときは、こちらの画像のように、神社の正門前にあった公園が大規模な改修工事を受けていた。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F1.8・1/800秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

境内の西隣にある通町公園と一体化させて整備している最中なのだとか。本稿を公開する2026年2月現在も工事は続いているので、規模の大きな改修であることがうかがえる。新しく生まれ変わる門前の様子を見るのが楽しみだ。

ちなみに、この通町公園がある一帯には、戦前までは千葉氏の菩提寺である大日寺が建っていたらしい。寺の建物は空襲で焼け落ちてしまったが、現在は寺内にあった千葉氏累代の墓所と共に千葉大学の裏に移され再建されている。

神社の正門である尊星殿の前は工事中だったので、西側の鳥居から境内へお参りさせてもらった。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/200秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

画面の中央奥に建っているのが尊星殿だ。この時は境内でも大規模な工事が行われていたので、いつも以上にアングルの工夫が要求されるシーンが多くあった。

そしてこちらが、尊星殿を本殿のある側から撮影したものになる。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/80秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/雅

神社建築では類例のない楼門と社殿の複合建築物として知られている。元々この場所にあった山門は空襲で焼失してしまったが、1998年に現在の形で再建された。なお、この建造物は中央・東・西・上階の4つで構成されており、妙見様が掌握する日・月・星などの神力を個別で受けられるようになっているとのこと。

ちなみに、ここからはカスタムイメージ「雅(MIYABI)」に設定して撮影した。楼門の朱色を上品かつ艶やかに再現できるため、こういった神社建築を撮影するために存在する仕上がり設定なのだと改めて実感していた。

振り返って、こちらは千葉神社の本殿である重層社殿

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/125秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/雅

上階と下階に合計2つの拝殿を持つ日本初の社殿として知られている。元々あった本殿も空襲で失われてしまったが、1990年に行われた「平成の大造営」によって現在の姿で建てられることになった。

僕の訪問時は本殿前の左右で工事が行われていたため、縦位置構図で撮影することにした。ここでもカスタムイメージ「雅」がとても良い仕事をしてくれた。

続いて、妙見池を挟んで境内の西端にある末社へ続く橋、ねがい橋を撮影。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/100秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/雅

ここでは鳥居を使って額縁構図を形成した。手前から奥へと続く導線を作ることで、物語に深みを加える。普段からよく愛用している28mmとは感覚が少し異なるが、31mmという画角は、境内のスケール感をまとめるのに適していると感じた。

なお、このねがい橋を渡ってから、池に架かっているもう1つの橋、かない橋を渡ると、願いが叶うと信じられているらしい。

最後に、重層社殿の西隣にある千葉天神をお参りした。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/60秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/雅

この社殿は元々、戦後の1954年に再建された旧本殿だったとのこと。平成の大造営で重層社殿が建造された折、以前の本殿だったこの社殿は現在の場所に移され、天神様(菅原道真公)の祈祷殿となった。現在は合格祈願のために多くの受験生が参拝する。

受験生たちが願いを込めて奉納した絵馬を適度にぼかしつつ、奥に天神様の社殿を配置することで、願いの成就へ続く導線を表現。カスタムイメージ「雅」と神社建築との相性の良さを改めて強く実感した。

千葉県庁と羽衣公園

千葉神社でのお参りと撮影を一通り終えた後は、千葉市中央公園に一旦戻って経由しつつ、南方にある千葉県庁を目指す。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/160秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

南へまっすぐ十数分歩くと、やがて正面に千葉県庁のビルが見えてくる。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/125秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/銀残し

ここでは再びカスタムイメージを「銀残し」に設定して、荒廃した都市のような印象を意識した。低彩度・高コントラストの仕上がりに、水平をやや傾けて斜めにすることで、わずかな不安定さを画面に加えてみた。ここでも信号が良い味を出してくれている。

次に、千葉県庁の下を潜って、ビルの反対側にある羽衣公園に向かう。この公園には1本の松が植えられているのだが、実はこの場所こそが千葉氏の始まりの地であるということを知る人はそう多くない。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/100秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

千葉神社を創建した平良文から4代後に、千葉氏の初代当主とされる平常将という武士がいた。当時この場所には咲き誇る数多の蓮、「千葉(せんよう)の蓮」が咲き誇る広大な池があり、そのほとりには1本の松が生えていたという。

平常将がこの地を訪れた際、天女のように美しい女性が池で寛いでいたのを見かける。傍らにある松には天女が羽織っていた羽衣が掛けられていたが、常将は彼女を妻にするため、それを奪うことで天女が天に帰れないようにしようと考えた。

その結果、天女は常将と夫婦になり、跡取りとなる子供(平常長)を産むことになった。その経緯を聞いた時の天皇は、「千葉の蓮」にちなんで「千葉」という姓を平常将に与えた。それ以後、常将とその子孫は千葉氏を名乗るようになったと伝えられる。

一説によると、伝承に登場する「天女」とは、天皇に仕える上級貴族(天人)の娘のことを指していたとか。いずれにしろ、この松がある現在の羽衣公園は、千葉氏の由来となった「千葉の蓮」が存在した場所と伝えられている。

なお、現在ある松は代を重ねて復元されたものらしいが、その近くに千葉県庁が建っていることには歴史の連続性を感じさせられた。

亥鼻城(千葉城)

羽衣公園の後は、今回の行程の中でも印象的な場所である亥鼻城(いのはなじょう)を目指す。一般的には「千葉城」という通称で知られている平山城だ。

羽衣公園の真向かいには千葉県警の本署があり、その脇道を通って東へ進む。すると千葉県立中央図書館の建物が正面に見えてくるので、そこを左折して少し歩くと、右手側に亥鼻城のある高台へ続く階段が見えてくる。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/250秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

ちなみに、亥鼻城へは千葉県立中央図書館から右へ回り込む形でも辿り着ける。その途中、図書館の裏手には、人気漫画『青のオーケストラ』の聖地でもある千葉市民会館がある。僕は城へ向かう際はこちらのルートもよく利用するが、こちらの記事で少し触れているので興味がある方は参照にしてほしい。

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階段を上がり切ると、正面に亥鼻城の天守が見えてくる。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F3.5・1/500秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

亥鼻城は千葉常将(平常将)から3代後の子孫である千葉常重によって、1126年に現在の地に築城された。元々の拠点があった大椎城(現在の緑区大椎町)から移ってきたとのこと。それから1455年に一族の内紛で宗家が滅亡するまでの300年余り、千葉氏の居城として栄えた。

ちなみに、千葉常重の子には、一族の中興の祖であり、源頼朝に味方したことでも有名な千葉常胤がいる。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、頼朝が「父のように慕っている」と言っていたその人である。

現在建っている亥鼻城は模擬天守であり、千葉常重が築城した当時のものとは姿が大きく異なるらしい。そのため、天守自体には築城当時の面影は残ってないが、城の正面にある広場の奥には当時の土塁や堀切が残っており、市の文化財に指定されている。

なお、城の中は千葉市立郷土博物館になっており、無料で千葉氏や千葉市に関する展示が楽しめるようになっている。天守は屋上まで上ることもでき、そこからは千葉の街や港などを一望することも可能だ。

そんな亥鼻城を千葉常胤の像と一緒に正面から撮影したのがこちら。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F5.6・1/125秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/銀残し

ここでもお気に入りのカスタムイメージ「銀残し」を使用。源平合戦の時代を思わせる重々しさを表現してみた。亥鼻城はこれまで何度も撮影しているが、これまでとは異なる印象の仕上がりとなった。

亥鼻城天守の正面にある広場は公園になっており、市民が菜園を楽しめる場所にもなっている。そして、なんと、そこには4匹の兄弟猫が暮らしている。

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F5.6・1/50秒)/-0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

10年ほど前からここに住みついているらしく、地元の方々によって世話されている。亥鼻城のマスコットキャラ、城主のような存在として可愛がられているようだ。いわば、猫殿様といったところだろうか。

どの子もとても人懐っこく、僕も亥鼻城を訪れる度に写真を撮らせてもらっている。今回はちょうどおやつタイムに立ち会えたので、その様子を撮影させてもらった。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/2000秒)/-0.3EV/ISO 800/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

ただ、今回使用したHD PENTAX-FA 77mmF1.8 LimitedはAF時に駆動音が鳴る仕様のため、ピント合わせの度に音で猫たちの注意を引いてしまい、撮影には少し苦戦した。一眼レフだとピント調整時のハードルは上がるが、自然な表情を撮りたい場合はMFで臨むのがいいかもしれない。

可愛い猫たちとの触れ合いを堪能した後は、広場の奥にある階段から城の裏にある出口へ向かう。こちらの画像は階段の下から振り返って広場と亥鼻城の天守を撮影したもの。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/4000秒)/-0.3EV/ISO 800/分割測光/WB曇天/Gold

千葉公園の最後以来の登場だが、このときはカスタムイメージ「Gold」を適用。F2.8の小さいF値で天守以外を適度にぼかしつつ、風景を黄金色で淡く色付けることで、セピア風の画像に仕上げてみた。

続いて、裏道の途中にある休憩用の東屋を撮影。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/800秒)/-0.3EV/ISO 800/分割測光/WB曇天/Gold

こちらでも同じく「Gold」を使ったが、どことなく寂しさを感じる夕暮れのような雰囲気を纏わせることができた。

最後はこちら。裏道の脇にある石の椅子を「Gold」で撮影した。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/1000秒)/-0.3EV/ISO 800/分割測光/WB曇天/Gold

仕上がり設定だけで一定の完成度に到達する点は、PENTAXの一眼レフが持つ魅力の一つだと感じた。いつもとは違う撮影体験を存分に堪能した後、僕は亥鼻城を後にした。

都川公園〜JR千葉駅

亥鼻城の裏にある道を下って出口を抜けると、千葉県庁や千葉県警のビルがある大通りに出る。そこから千葉都市モノレールの県庁前駅まで進んだ後、右折して末広街道をモノレールに沿って少し歩くと、すぐ左手側に都川公園が見えてくる。

僕が公園を訪れた3月中旬は、園内に早咲きの桜がほぼ満開の状態になっていた。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/250秒)/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

まだそれほど多くはなかったが、園内には桜を楽しむ花見客も随所に見受けられた。こちらの画像はその1コマを撮影したスナップ。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/40秒)/ISO 100/分割測光/WB曇天/春紅

Lmitedレンズとの組み合わせでのみ適用が可能になる、特別仕様のカスタムイメージ「春紅」を使用。春の訪れを感じさせる桜のピンクを強調することで、どんよりとした曇り空の下でも花見の1コマを明るく華やかな印象で表現できた。

そして、こちらが桜自体をテーマにした花写真。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/80秒)/+0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/春紅

露出を少しだけ明るく補正するだけでも、春らしい上品で艶やかな仕上がりが簡単に実現できた。Special Editionのカスタムイメージというだけあって、条件が合えば強い魅力を発揮する仕上がりだと感じた。

都川公園での撮影を終えた後は、スタート地点があるJR千葉駅に戻るため末広街道を北上した。今回はその途中でモノレールの駅がある葭川公園に寄ってみた。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/100秒)/+0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/リバーサルフィルム

ここもまたモノレールを撮影するのにおすすめの場所の1つ。このときはちょうど園内のベンチに鳩が群がっている光景に遭遇したので、スナップ撮影させてもらった。

なお、この公園に面した場所には、以前オリンパス(現OM SYSTEM)が出張ショールームのイベント「OLYMPUS POP UP PLAZA」を開催した際に会場として利用したビルも建っている。2018年のことで、OM-D E-M1 Mark IIの体験会で僕も参加していたが、当時のことが懐かしく思われる。

少し感慨に耽ったら、そのまま千葉駅を目指して北上を続ける。いよいよ千葉駅前のロータリーにあるバスまで戻ってきたときに撮影したのがこちらの画像。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/50秒)/+0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/銀残し

今回のお約束となったカスタムイメージ「銀残し」でバス待合所の雨除けに映り込んだ人々の往来を撮ったものになる。シャッター速度を1/50秒まで遅くして人の流れを少々ぶらすことで、人の流れにわずかな非日常感を与えることを意識した。

そして、千葉駅の構内から撮影した今回最後の作例画像がこちら。

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited/絞り優先AE(F2.8・1/100秒)/+0.3EV/ISO 100/分割測光/WB曇天/Gold

千葉駅を出ていく総武快速線の列車をカスタムイメージ「Gold」で仕上げた。黄昏を思わせる淡い黄金色の画作りが、旅が終わる寂しさのようなものを表現するのに一役買ってくれた。改めてカスタムイメージの幅の広さを実感した。

以上でPENTAX K-1 Mark II体験会で行ったフォトウォークは終了となる。お借りしたカメラとレンズを返却し、諸々の手続きを済ませ、僕はイベント会場を後にして帰路に就いた。

その直後に雨が降り出した。撮影中に天候が持ったのは幸運だったと言えるだろう。僕にとってはとても満足のいく楽しいイベントだった。

実写体験から見えたPENTAX K-1 Mark IIの評価

このパートでは、半日の実写体験を通して得たPENTAX K-1 Mark IIに対する僕の所感や評価を率直に共有していく。普段OM SYSTEMのMFTミラーレスを愛用しているユーザーがフルサイズ一眼レフのK-1 Mark IIをどう評価したかを知るのに参考なればと思う。

傑作であることは間違いない

半日とはいえ実際に千葉の街を歩きながら使ってみて、まず率直に感じたのは、PENTAX K-1 Mark IIがフルサイズ一眼レフとして極めて完成度の高いカメラであるということだ。

有効約3640万画素センサーがもたらす解像感は明確で、建築物の細部や遠景まで緻密に描き出す力を持つ。普段使用している約2000万画素クラスのMFT機と比べても、情報量の差は確かに存在した。高感度性能にも余裕があり、ISOを多少引き上げても画質の破綻を強く意識する場面はほとんどない。

光学ファインダーの見え味も印象的だ。像は大きくクリアで、表示遅延がない。電子表示を介さずに被写体を見る体験は、撮影の根源的な楽しさを思い出させてくれる。ハイパープログラムなど独自の操作系も合理的で、慣れるほど直感的に扱える。

そして何より、カスタムイメージの完成度は特筆に値する。リバーサルフィルムや銀残し、雅、Gold、春紅などはそれぞれ明確な個性を持ち、JPEG撮って出しでも作品として成立する仕上がりを見せる。Limitedレンズとの組み合わせが生む描写も独自性が強く、単なる高解像機とは異なる思想を感じさせる。

総じて、K-1 Mark IIは「どう写すか」という哲学を備えた一台であり、フルサイズ一眼レフの中でも確かな個性と完成度を持つ名機であることは疑いない。

しかし撮影テンポは大きく異なる

完成度の高さを認めたうえで、実写を通して強く感じたのは、撮影テンポの違いである。PENTAX K-1 Mark IIは決して扱いにくいカメラではないが、日常的に使用しているMFTミラーレス機とは明らかにリズムが異なっていた。

特にライブビュー撮影時のAF速度や連写性能は控えめで、動体を追い続ける用途には向いていない。モノレールのように動きが一定で予測しやすい被写体であれば対応できるが、猫や人の不規則な動きを捉える場面では難易度が上がる。瞬間を数で押さえるというよりも、構図を決めてから一発で仕留める撮り方が求められる印象だった。

また、Limitedレンズ使用時のAF駆動音も印象に残っている。ピント合わせのたびに発生する機械的な作動音は、静かな環境や小動物の撮影では無視できない要素となる。一眼レフ特有の構造的な制約も含め、静粛性という観点では最新のミラーレス機に分があると感じた。

つまり、K-1 Mark IIは速さで押すカメラではなく、じっくり向き合うためのカメラである。撮影者の集中力と判断力を前提に、一枚を丁寧に積み重ねていく。この違いは優劣の問題ではなく、そうした思想があることも理解できる。だが、成功率や瞬発力を重視する自分のスナップスタイルとは、明確にリズムが異なっていた。

身体感覚との相性

撮影テンポの違い以上に強く意識させられたのは、自分の身体感覚と完全にはシンクロしないことである。PENTAX K-1 Mark IIのボディ重量は約1kg。数値だけ見れば極端に重いわけではないが、実際に数時間歩きながら構え続けていると、その重みは確実に手首や腕に蓄積していく。

今回は比較的軽量なLimited単焦点レンズ2本での運用だったため、大きな負担にはならなかった。しかし、F2.8通しの大三元ズームや★レンズを組み合わせた場合、長時間の街歩きでは相応の覚悟が必要になるだろう。機材の存在感が常に身体に意識されるという点は、旅スナップを主軸とする自分にとって無視できない要素だった。

もうひとつ大きかったのは、被写界深度の浅さだ。F2.8前後でも十分に背景がぼける描写は魅力的だが、MFTと同じ感覚でF値を設定すると、前景や背景が必要以上にぼけたり、わずかなピントのズレが目立ったりする場面があった。結果として、絞り値の選択やピント位置の確認にいつも以上に神経を使うことになる。

こうした重量と被写界深度の特性は、フルサイズ一眼レフの本質的な魅力でもある。しかし、自分の旅スナップのように、歩きながら瞬間を拾い集めていく撮影スタイルにおいては、その特性が常に有利に働くとは限らない。そこに、身体感覚との微妙なずれを感じたのである。

JPEG完結型カメラとしての強み

撮影テンポや身体感覚との相性は今ひとつだったが、実写体験を通してPENTAX K-1 Mark IIには無視できない魅力があると実感したことは間違いない。それは、JPEG撮って出しの完成度の高さだ。とりわけPENTAX独自の「カスタムイメージ」は、単なる色味の違いではなく、明確な世界観を持った仕上がり設定として完成している。

「リバーサルフィルム」は発色と階調のバランスが絶妙で、「銀残し」は荒廃感や重厚感を演出できる。「Gold」や「雅(MIYABI)」に至っては、光の印象そのものを変える力がある。設定を切り替えるだけで表現の方向性がはっきり変わる体験は、他社機ではなかなか味わえない。

Limitedレンズとの組み合わせでは、その描写力と色作りが高い次元で融合する。絞りを開けたときの立体感、ハイライトの粘り、ボケの質感。それらがJPEGの段階でほぼ完成しているため、RAW現像に頼らずとも十分に作品として成立する。

もちろんRAWで追い込む自由度や精度は他社ミラーレス機の方が高い。しかし、撮影の時点で世界観を決め、そのまま持ち帰れるという思想は明確だ。撮る行為と仕上げが地続きになっている感覚は、写真を“作る”というより“写す”体験に近い。

K-1 Mark IIは性能や効率だけで語るカメラではない。JPEG完結型の表現装置として見たとき、その魅力は一段と鮮明になる。

結論:自分が選ぶなら

総じてPENTAX K-1 Mark IIは紛れもなく完成度の高いフルサイズ一眼レフである。描写力、色作り、操作思想のいずれを取っても、長年磨き上げられてきた一眼レフの到達点のひとつと言って差し支えない。

しかし、自分が実際にシステムとして選ぶかと問われれば、答えは少し変わる。

旅先で歩きながら瞬間を拾い集めていく現在の撮影スタイルにおいては、撮影テンポ、重量、被写界深度の扱いやすさといった要素が重要になるからだ。その観点から考えると、自分がPENTAXを使うのであれば、フルサイズのK-1 Mark IIではなく、K-3 Mark IIIやKPのようなAPS-C一眼レフを選びたいというのが正直なところだ。

それはK-1 Mark IIを否定するという意味ではない。むしろ、その完成度を認めたうえで、自分の身体感覚や撮影リズムとの相性を冷静に見極めた結果である。

今回の体験を通して改めて実感したのは、カメラ選びに絶対的な正解は存在しないということ。優れたカメラであることと、自分に合うカメラであることは必ずしも一致しないからだ。

K-1 Mark IIは今なお強い魅力を放つ名機である。その存在に敬意を抱きつつも、自分は自分の道具を選ぶ。そうした判断こそが、今回の実写体験から得た最も大きな収穫だった。

フルサイズ一眼との相性検証

最後に、今回のPENTAX K-1 Mark II実写体験で得た経験をもとに、MFT(マイクロフォーサーズ)ユーザーである自分と、フルサイズ一眼との相性について改めて整理してみたい。一眼レフかミラーレスかに関わらず、フルサイズ一眼の必要性について思い悩んでいる方にとって、何らかの判断材料になれば幸いである。

フルサイズの優位性は否定できない

まず前提として明確にしておきたいのは、フルサイズ一眼が持つ優位性は確かに存在するという事実である。センサーサイズが大きいことによる解像力の余裕や階調の滑らかさ、高感度撮影時のノイズ耐性は、物理的な条件に裏打ちされた強みだ。特に光量の乏しい場面や、繊細なトーン再現が求められる風景などの撮影では、その差は無視できない。

また、被写界深度の浅さによって得られる大きなボケ表現も、フルサイズならではの魅力である。被写体を強く浮かび上がらせる立体的な描写は、ポートレートや作品制作において大きな武器となるだろう。加えて、レンズラインアップの充実度やプロ用途での信頼性という点でも、フルサイズは長年にわたり市場の中心を担ってきた。

今回PENTAX K-1 Mark IIを通して体感したのも、まさにその“余裕”であった。描写の密度、ハイライトの粘り、暗部の破綻の少なさはいずれも高い水準にある。したがって、フルサイズがMFTやAPS-Cに対して画質面で優位に立つという評価自体を否定するつもりはない。それは冷静に認めるべき事実である。

重要なのは、それらの優位性が「存在しない」のではなく、「常に必要とは限らない」という点にある。 その前提を共有したうえで、次に自分の撮影スタイルとの関係を考えてみたい。

しかし自分の主軸とは噛み合わない

フルサイズの優位性を認めたうえでなお、自分の主軸とは噛み合わないと感じる理由も明確である。

まず機動力だ。旅先では1日に5〜10km以上歩き回ることも珍しくない。そのため、レンズ数本を含めた総重量をできるだけ2kg程度に収めたいというのが現実的な基準になる。フルサイズで同等の画角を揃えようとすれば、重量はすぐにその枠を超えるか、持参できるレンズ本数を減らす選択を迫られる。

次に、歩き撮りとの相性である。三脚に頼らず、状況に応じて1秒を超える低速シャッターを手持ちで実用できるだけの手ぶれ補正は、歩き撮りが主の自分にとって欠かせない要素だ。強力なボディ内補正を備えたMFT機では心理的な余裕を持って構図に集中できるが、フルサイズ一眼では同じ感覚での運用は難しい。

さらに、被写界深度の扱いやすさも大きい。旅先の風景をパンフォーカス気味に収めたり、ドキュメンタリーで周囲の環境を含めて描写したりするには、MFTで得られる程度の深さがちょうど良い。フルサイズ一眼ではピント位置やF値の操作により強い集中を求められる。

そして何より、画質のポテンシャルである。確かにMFTは解像度や高感度耐性ではフルサイズ一眼と比べて不利だ。しかし、現代はOM SYSTEM機が搭載するハイレゾショットや、現像ソフトで利用できるAIノイズ除去などの先進機能を使うことで、MFTでも実用上は十分な画質が得られる。特殊機能や編集工程も含めた総合的な画質が大差ないなら機材は軽い方がいい。

こうした点が積み重なり、主軸としては選びにくいという結論に至っている。

フルサイズは“絶対”ではない

ここまで整理してきたように、フルサイズ一眼が持つ優位性は確かに存在する。しかし、それが常に最適解であるとは限らない。重要なのは、画質やセンサーサイズの優劣そのものではなく、自分がどのような撮影体験を求めているかという点にある。

長らくフルサイズは「最高画質の象徴」として語られてきた。確かに物理的条件に裏打ちされた余裕は魅力的だ。しかし、撮影とは単にデータを最大化する行為ではない。機材の重量、被写界深度の特性、手ぶれ補正の挙動、操作リズムといった要素も含めて、総合的に体験として成立するものである。

もし撮影者が三脚を据えて一枚を丁寧に作り込むのであれば、フルサイズは大きな力を発揮するだろう。一方で、長距離を歩きながら瞬間を拾い続ける撮影様式においては、MFTやAPS-Cなどのより小さいフォーマットの方が合理的な場合もある。ここに優劣はない。あるのは用途と思想の違いだけだ。

だからこそ、フルサイズを“絶対”の基準として捉える必要はない。フォーマットは目的のための手段であり、撮影者の思想に従って選ばれるべき存在である。今回の実写体験は、そのことを改めて自覚させてくれた。

結論:自分にとっての最適解

ここまで整理してきた結果として、自分にとっての最適解は明確になった。主軸とするフォーマットは、これからもMFTである。機動力、強力な手ぶれ補正、扱いやすい被写界深度、そして先進技術によって底力を発揮する画質のポテンシャル。そのすべてが、自分の旅スナップという撮影様式と無理なく噛み合っている。

もちろん、フルサイズ一眼を否定するつもりはない。高い解像力や豊かな階調表現、大きなボケ味は確かに魅力的だし、用途によっては最良の選択となるだろう。ただ、自分が日常的に持ち出し、長距離を歩きながら撮影する道具として考えたとき、常に最適とは言い難いというだけの話である。

重要なのは、世間的な序列やスペックの優劣ではなく、自分の身体感覚や撮影思想に合っているかどうかだ。今回のPENTAX K-1 Mark II実写体験は、その判断軸を改めて明確にしてくれた。カメラ選びでもはやブレることはないだろう。

フォーマットに絶対的な正解はない。あるのは、自分にとっての最適解だけである。

総評

今回のPENTAX K-1 Mark II実写体験は、単なる機材レビューにとどまらず、自分の撮影思想を改めて確認する機会となった。名機と呼ぶにふさわしい完成度を備えたフルサイズ一眼レフに真正面から向き合ったことで、自分が何を重視し、どこに軸足を置いているのかがより鮮明になったと言える。

まず何より、このような貴重な体験の場を用意してくれたリコーイメージングには深く感謝したい。一眼レフ文化を今なお真摯に守り続けるその姿勢には敬意を抱かずにはいられない。細くても構わないので、どうかこれからも一眼レフの開発をできるだけ長く続けてほしいものだ。

K-1 Mark IIは確かに魅力的なカメラである。しかし、自分の主軸はこれからもMFTに置く。ただし、それはPENTAXと距離を置くという意味ではない。もし将来、K-3 Mark IVのような新型APS-C一眼レフが登場するのであれば、ぜひとも導入を検討したいと考えている。今回の体験で、その思いはむしろ強くなった。

フォーマットに絶対的な正解はない。重要なのは、自分の思想に沿った選択ができているかどうかだ。今回の実写体験は、その基準をより明確にしてくれた。そしてこの整理は、近日中に展開予定の「ある構想」へも静かにつながっていくことになるだろう。

ひとつの体験は終わった。しかし、写真の旅はまだ続いている。

 

今回の街歩きで使用したカメラ機材

一眼レフカメラ

PENTAX K-1 Mark II

交換レンズ

HD PENTAX-FA 31mmF1.8 Limited

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited

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