関東もついに梅雨入りを迎えた今日この頃。
これから雨の日が増えてくるが、カメラユーザーの中には雨でも積極的に撮影を楽しみたいという方も少なからずいることだろう。
しかし、雨の日、特に梅雨や夏場のような高湿な環境での撮影で絶対に注意しなければならないことがある。
それが、交換レンズに発生する結露だ。
今回の記事では、高湿な環境での撮影で交換レンズに発生する結露の原因と予防策、そして、結露してしまったレンズの処置方法を解説していく。
この記事に書いたことを実践していけば、万一あなたの愛用しているレンズに結露が発生してしまったとしても復帰できる可能性は十分にある。
だからどうか諦めないでほしい。
あなたのレンズはまだ大丈夫だ。

レンズに発生する結露とは?
レンズに発生する結露がどういうものか知っていただくところから始めよう。
まずは、下記の画像を見てほしい。

これは結露が発生した交換レンズの前玉の状態をGoogleの生成AI「Gemini」で再現した画像だ。
前玉の表面に水滴が付いているだけではなく、前玉の内側にも水滴ともやが付着していることがお分かりいただけるだろう。
当ブログで初期に執筆した記事で今でも人気のものに下記の記事がある↓
これは新海誠監督が2013年に公開したアニメ映画『言の葉の庭』の舞台に採用された新宿御苑を梅雨真っ只中の雨の日に聖地巡礼したものだ。
実は、当時この取材撮影の最中、僕が主力で使っていた防塵・防滴仕様の高倍率ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II」が突然結露に見舞われるというトラブルが発生していた。
その時の結露にまみれたレンズの画像を残すことはできなかったが、異変に気付いた時には先ほどのGeminiで生成した画像とほぼ同じような状態に陥っていた。
覚えておいてほしいのは、この結露という現象は上記のように防塵・防滴仕様のレンズでも十分に起こりうるということだ。
そのため、防塵・防滴仕様のレンズであったとしても、その耐候性を決して過信することなく、雨の日の撮影に使用するには結露に対して何らかの対策を用意しておく必要がある。
ちなみに、結露が発生した状態のレンズで撮影すると次のような写りになる。



これらは当時にレンズを結露させた状態のまま撮影した画像だが、ソフトフォーカスフィルターをかけたように全体が白くもやがかっていることがお分かりいただけるだろう。
このように結露にまみれてしまうと、高価なレンズであってもせっかくの優れた解像性能を活かし切ることができなくなってしまう。
しかもそれだけでは済まされない場合もある。
結露で生じた水滴がレンズやカメラの内部まで深く浸透すると、機器のショートや故障を引き起こしたり、カビを発生させる温床に繋がったりもする。
ゆえに、撮影中に発生する結露は絶対に避けたいトラブルの1つなのだ。
結露が発生する原因
次に、レンズに結露が発生する原因を解説しておこう。
主な原因は、急激な温度変化、高すぎる湿度、そして夜間の放射冷却と水蒸気飽和の3つになる。
順を追って説明しよう。
急激な温度変化
レンズに結露が発生する原因で一番多いものが急激な温度変化だ。
高温多湿の環境から急激に低温の環境へ移動した時に結露は発生しやすくなる。
梅雨の雨の日に新宿御苑で「聖地巡礼:言の葉の庭」の取材をしていた僕のように、カメラやレンズにカバーをかけず抜き身のまま使用する状態がまさにこれだ。
結露が発生するメカニズムは次の通り。
①強く冷たい雨がレンズに直接当たり続けることでレンズの表面や内部の空気が急激に冷やされる。
②冷えたレンズの表面にレンズ内外の空気が触れると、中に含まれる水蒸気が飽和して結露が発生する。
③結果的に、レンズの前玉の表面と裏面に水滴やもやが付着してしまう。
なお、寒い場所から暖かい場所へ急に移動した場合にも結露は発生する。
例えば、冷房の効いた涼しい室内から夏場の暑い屋外へ出る場合や、冬場の寒い屋外から暖房の効いた暖かい室内へ入る場合などが該当する。
基本的なメカニズムは先ほどと同じで、冷えたレンズの表面に空気が触れることで中の水蒸気が飽和し、結果として結露が発生するという流れだ。
つまり、室内と屋外とで大きな温度差がある環境や、強い雨や雪でレンズの表面が急激に冷えるような環境では、常に結露のリスクを想定しておいた方がいいということだ。
高すぎる湿度
レンズに結露が発生する原因の2つ目は、高すぎる湿度。
これは単に、湿度が極端に高い環境では結露が発生するリスクも高くなるというだけの話だ。
例えば、雨天時、霧の中、水辺、熱帯雨林などの高湿な環境が該当する。
こういった場所では空気中の水蒸気量が多く、結露のリスクも大幅に高まるため、何らかの対策が必要になる。
夜間の放射冷却と水蒸気飽和
結露の発生原因でもう1つ忘れてはいけないのが、夜間の放射冷却と水蒸気飽和だ。
これは夜間に夜景や星景(星空風景)の撮影を行う際に特に注意したい。
放射冷却とは、地面や物体から熱が宇宙空間に放射され、その表面温度が周囲の気温よりも著しく低下する現象のこと。
夜中、特に快晴の夜はこの放射冷却が非常に起こりやすくなるため、夜空にレンズを向けているとその表面の温度が周囲の空気よりも冷たくなる。
加えて、夜間は日中に比べて気温が低下するので、空気が保持できる水蒸気量が減少し、飽和しやすくなる。
つまり、放射冷却で冷たくなったレンズの表面に、水蒸気の飽和しかけた空気が触れることで結露が発生してしまうというわけだ。
この現象は、夜間の屋外にレンズを長時間設置する場合によく起こりがちのため、これから夜景や星景の撮影を本格的に始める方は知っておいた方がいいだろう。
結露の予防策
結露が発生するメカニズムを理解したところで、ここからは結露を未然に防止する対策について解説していく。
主な予防策は、段階的な温度順応、レインカバーの活用、レンズヒーターの活用の3つだ。
段階的な温度順応
結露の予防に関しては、段階的な温度順応が基本的な考え方になる。
つまり、明らかに大きな温度差がある環境の間を移動する際、急にカメラの使用を開始しないということだ。
寒い場所から暖かい場所へ、または、暖かい場所から寒い場所へ移動する際は、カメラやレンズなどの機材をカメラバッグからすぐに取り出してはいけない。
機材を使う撮影場所に着いたら、カメラバッグに入れたまま数十分から1時間ほど放置しておき、徐々に周囲の温度に慣らすよう心掛けよう。
この温度順応によって、レンズと外気の温度差を緩やかにできるため、結果として結露が発生しにくくなる。
レインカバーの活用
ただし、いくら温度順応を施していたとしても、強く冷たい雨や雪に打たれる環境の撮影では結露の発生原因であるレンズ表面の急激な温度低下を阻止することはできない。
そんな環境での撮影に用意しておきたいのが、カメラ用のレインカバーだ。
レインカバーで交換レンズの周囲を覆っておくことで、雨や雪がレンズに直接当たるのを阻止できるため、結果的に表面温度の急激な低下も避けられる。
つまり、レインカバーを上手く活用すれば、雨の日や雪の日でも結露の発生に怯えることなくのびのびと野外撮影が楽しめるようになるのだ。
なお、カメラ用のレインカバーとしては、僕も愛用している下記のものをおすすめする。
ピークデザイン(Peak Design)のシェル(Shell)というシリーズのものだ。
シェルシリーズのレインカバーはアンカー用の通し穴が左右に設けられているので、カメラに装着したままリーシュ(Leash)やスライドライト(Slide Lite)などピークデザインのカメラストラップと併用できる。
また、カメラの底部は覆わない作りのため、同社のカメラアタッチメントであるキャプチャー(Capture)とも組み合わせて使用できる。
ちなみに、このシェルシリーズはSmall・Medium・Largeという3つのサイズで提供されているが、大まかな対象カメラシステムの区分けは次の通りになっている。
- Small(Sサイズ):小型ミラーレスカメラ+標準〜望遠ズーム or 単焦点レンズ
- Medium(Mサイズ):中型ミラーレスカメラ+ 標準〜望遠ズーム or 単焦点レンズ
- Large(Lサイズ):グリップ付きフルサイズミラーレスカメラ+ 標準〜望遠ズーム or 単焦点レンズ
僕はSサイズとMサイズのものを所有しているが、OM SYSTEMのMFTミラーレスカメラに装着して使う場合は次の組み合わせがちょうどいい。
- OM-5/E-M5系 + 14-150mm F4-5.6 II →Sサイズ
- OM-3 + 20mm F1.4 PRO → Sサイズ
- OM-1/E-M1系 + 12-100mm F4 PRO → Mサイズ
なお、OM-1/E-M1系に関しては、縦位置グリップを装着した状態でも下部までMサイズのもので十分に覆えるので、Lサイズを選ぶ必要はないだろう。
いずれにしろ、これらのレインカバーを上手く活用していけば、雨の日や雪の日でもしっかりと乗り切れるだろう。
レンズヒーターの活用
快晴の夜間の屋外にカメラを長時間設置して夜景や星景の撮影を行う場合は、結露対策としてレンズヒーターを用意しておきたい。
これはレンズ用の保温器具で、帯状の本体の中にヒーターが搭載されており、マジックテープでレンズの鏡筒に巻き付けるように固定することで使用するというものだ。
外側からレンズをわずかに加温することで、レンズの表面温度を周囲の気温より少し高く保てるようになる。
これによって、レンズ表面の温度が水蒸気飽和が起きる温度(露点温度)を下回ることを防ぎ、空気中の水蒸気がレンズに触れても結露しにくくなるというわけだ。
電源にはスマートフォンで使うモバイルバッテリーが有効なので、野外撮影でも取り回しに困ることがないのも人気の理由となっている。
なお、まずおすすめしたいのが、天体望遠鏡も扱っている国産老舗メーカーであるVixenのレンズヒーター 360 IVだ。
価格はやや割高だが、星景撮影を生業にするプロからの評価も高いため、安心して使っていくことができるだろう。
もう少し安いものをお探しということなら、NEEWERのUSBレンズヒーターを検討するといい。
手頃な価格ながら評価の数と内容が非常に充実しているので、コスパを重視したいという方のニーズにも応えられる。
最後に、レンズヒーターの電源に使うモバイルバッテリーに関しては、下記のANKER製のようにシンプルなもので十分だろう。
ぜひレンズヒーターを上手く活用して、結露の発生を予防しつつ夜景や星空の撮影を存分に楽しんでもらえればと思う。
結露してしまった場合の処置
どんなに予防策を取っていたとしても、愛用のレンズが結露してしまうことも十分に考えられるだろう。
ここからは万一レンズが結露してしまった時に取りたい処置方法について解説する。
具体的な手順としては、電源を切る、レンズをカメラから外す、そしてドライボックスで乾燥させるの3段階が主になる。
順に詳しく見ていこう。
カメラの電源を切る
レンズの前玉の内側に結露が発生していることを確認したら何よりもまず行いたいのが、カメラの電源を切ること。
内部に結露が付着している状態で電気を通すと、カメラやレンズが搭載する電気部品がショート・故障する原因になる可能性があるからだ。
すぐにカメラの電源を切ろう。
以前の僕のように、間違っても結露したままの状態のレンズで撮影を続けようとは思わないことだ。
レンズをカメラから外す
次に行う処置は、レンズをカメラから取り外すこと。
ミラーレスカメラや一眼レフカメラなどのレンズ交換式のカメラでは、可能な限りレンズをカメラから外しておきたい。
レンズに発生した結露はカメラ本体へも影響を及ぼすリスクがあるので、そうなる前に双方を完全に分離しておこう。
コンパクトカメラなどのレンズを外せない種類のカメラに関しては、仕方がないのでそのまま次の処置に移る。
ドライボックスで乾燥させる
最後にして最も重要な処置が、ドライボックスに入れて乾燥させること。
ドライボックスとは下記のような収納用具だ。

外から湿気が入らないように蓋の内側がゴムパッキンで密閉されており、中に乾燥剤と一緒にカメラ機材を入れることで、適切な湿度のもとで機材の保管が可能になる。

本来は機材保管用の収納箱なのだが、乾燥剤で内部の湿気を吸収するという特性を応用すれば、レンズに発生した結露の除去にも有効に活用できる。
結露したレンズを乾燥剤と一緒にドライボックスに入れて、数日〜1週間ほど安置しておけば徐々に水滴やもやを除去できるだろう。
また、低湿な状態が続くことでレンズ内部の湿気もゆっくり排出されるため、目に見える結露以外も含めて完全に乾燥させることが可能だ。
処置に使用するドライボックスに関しては、HAKUBAのドライボックスNEOをおすすめしたい。
収納容量に関しては5.5L・9.5L・15Lの3種類があるが、中間サイズの9.5Lが最も汎用性が高く使いやすいだろう。
フルサイズ規格のものも含む中型のミラーレスカメラ1台と、大口径レンズ2本程度であれば十分に収納できるので、大半のレンズを乾燥させるのに有効だ。
処置に使用する乾燥剤に関しては、同じHAKUBAの強力乾燥剤を使うといい。
蓋の内側に1個入れておくだけでも十分な乾燥力が得られて、なおかつ、コスパも優れているので、使い勝手が非常に良い。
ドライボックスのシリーズには、最近こちらのような新モデルも登場している。
これは持ち運べるドライボックスというコンセプトで作られた、HAKUBA ドライソフトボックスというものだ。
バッグに入れて持ち運ぶカメラ用インナーケースにドライボックスの密閉機能と乾燥機能が搭載されているため、移動中でもカメラやレンズの除湿が常に行える。
雨の日に撮影に出かける方が多い方にもおすすめだ。
防湿庫も結露の除去に有効
結露の処置に有効な機器として、ついでにこちらの防湿庫:Re:CLEAN RC-50Lも紹介しておこう。
庫内を密閉して湿気を除去することで機材保管に最適な環境を整備するという働きはドライボックスと同じだが、長期的な機材の保管に関してはこちらの方がより便利だ。
適切な湿度に設定しておけば常にその状態がキープされるばかりか、ドライボックスと違って乾燥剤を交換する手間も省けるので、ずっと楽に運用できる。
収納容量はドライボックスを大きく上回るため、多くの機材を所有している場合や、これから機材を増やす予定がある場合にもちょうどいい。
肝心の除湿性能もドライボックスの比ではないので、結露してしまったレンズもより効率よく乾燥を進められる。
僕はこのRe:CLEAN RC-50Lと、1サイズ上のRe:CLEAN RC-80Lを機材保管に愛用しているが、普段の機材保管や撮影後の除湿の両方でとても重宝している。

ドライボックスと比べて導入コストは高くなるが、長くカメラを楽しみたいと思っているなら1台導入しておくことをおすすめしたい。
追記(2025/6/12):Re:CLEAN防湿庫の長期レビューを公開
上記で紹介した防湿庫、Re:CLEAN RC-50LとRC-80Lの長期レビュー記事を新たに公開した。
【長期レビュー】Re:CLEAN RC-50L/RC-80L|高コスパで人気のカメラ防湿庫を徹底レポート!新モデルの変更点も解説
防湿庫の導入を考えている方はこちらも参考にしてもらうといいだろう。
どうしても改善しない場合は…
ただし、最後に1つ付け加えておこう。
万一結露したレンズをドライボックスや防湿庫に1週間以上入れて乾燥させても、水滴やもやが完全に取れない場合や、状態が改善しない場合は、最後の手段としてメーカーの修理サポートを利用してほしい。
ここまでの事態になることは非常に稀だが、修理のプロならより効果的な処置を施してくれると思うので、頭の片隅に置いておくといいだろう。
注意:絶対にやってはいけないこと
最後に、レンズに結露が発生した際に絶対にやってはいけない処置を共有しておこう。
ドライヤーで温める、ヒーターやストーブの側に置く、レンズを分解するの主に3つだ。
ドライヤーで温める
乾燥の処置でまず思い浮かぶのがドライヤーだが、これを使うのは絶対に避けたい。
ドライヤーの強い温風をレンズに当てると、急激な温度変化によってレンズのコーティングや接着剤がダメージを受ける恐れがあるからだ。
ヒーターやストーブの側に置く
ヒーターやストーブの側に置くのもレンズにはNGだ。
ドライヤーの時と同様、急激な温度変化や熱によって損傷してしまうリスクが高くなる。
レンズを分解する
結露を除去するためにレンズを分解するのも原則的に厳禁だ。
修理に関する専門知識がない限り、レンズは絶対に分解してはいけない。
一度分解したレンズを元通りに組み立てるのは至難の業だ。
仮に結露の除去に成功したとしても、組み立て時にホコリの混入や光学系のズレなどのトラブルが発生しやすくなるため、レンズ本来の描写を活かせなくなる恐れがある。
自分で分解しようとは絶対に思わないことだ。
総評
今回は、交換レンズに発生する結露の原因や予防策、そして結露してしまったレンズの処置方法について詳しく解説してきた。
ここまで書いてきたことをしっかりと実践していけば、結露をしっかり予防できるほか、万一結露が発生したとしても適切に対処できるようになるだろう。
結露を過剰に恐れる必要がなくなるので、雨の日や雪の日はもちろん、夜間でも積極的に野外での撮影が楽しめるようになるはずだ。
ぜひ過去の僕の失敗を教訓としてあなたの撮影生活に活かしてもらえればと幸いだ。